日立、発送電分離をにらんで送電事業に本腰 スイス重電大手・ABBとの提携に見る日立の狙い

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中西宏明・日立製作所CEOは、「ABBとは色々な協業の可能性がある」と語った。

日立はこれまで日本で設置された9つ全てのHVDCプロジェクトに参加し、突出した実績を誇る。にもかかわらず、日本市場にわざわざ海外企業を呼び込んだのは理由がある。

日立が手掛けてきたのは他励式HVDCという手法だが、今後需要が見込まれるのは自励式HVDCだ。機能に大きな違いはないが、中に入っているパワー半導体の違いにより、自励式の方が出力の不安定な再生可能エネルギーで作った電力をより安定的に運ぶことに適している。そのため、日本では自励式が今後主流になると見込まれている。

日立も自励式の技術開発を進めてきたが、運用実績がない。ABBは世界で完工済の自励式15サイトのうち14サイトを手掛けてきた。中西CEOは「なんでも自前主義は投資効率が悪い」と述べ、自社製品にこだわらず効率的に拡大の見込める方法でHVDC事業を進める。

提携範囲の拡大も視野

ただ、事業は国内のみのため、想定される売上高規模も10億~20億円程度。電力流通全体で日立が15年度に目指す1000億円と比較するとほんのわずかだ。当然、提携はHVDCだけにとどまらずこの先を見据えてのことだ。中西CEOは「色々な協業の可能性がある」と話し、電力での提携範囲拡大やFA(ファクトリーオートメーション)など他分野事業での提携の可能性も示唆した。

中西CEOはABBについて、「透明性があり、顧客志向が徹底している」と評価。ABBのウルリッヒ・シュピースホーファーCEOも「私の友人である中西さんと結ぶことができて光栄」と提携について語った。個人的にも両者の関係が良好であることがうかがえる。

 今年2月に日立は三菱重工業との火力事業を統合。世界に目を転じても、6月には重電最大手の米GEが仏アルストムのガスタービン事業の買収に合意するなど、重電の巨大化や再編が進んでいる。現時点では未定としているが、日立とABBの今後の関係に期待できそうだ。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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