核融合炉、低コスト化のアイデアとは? <動画>「理想のエネルギー源」の最前線

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提供:ロイター (ナレーションは英語です、音量にご注意ください)

日本ではあまり報じられていないが、「Dynomak型」と呼ばれる新しい核融合炉が関係者の間で注目されている。

ワシントン大学のニュースリリースによると、1ギガワットのプラントをつくるのに必要な費用は27億ドル。同じ1ギガワット発電する石炭火力のプラントをつくるのに必要な費用は28億ドルであり、かなり安い。

これが「Dynomak」

水素やヘリウムのような軽い原子の核は、極端な圧力と高熱の下では融合し合い、その際に強いエネルギーを発生する。これが核融合と呼ばれるもので、太陽のような恒星は、核融合によりエネルギーを出し続けている。同じ原子力発電でも、ウランやプルトニウムのような重い原子を使用する核分裂炉とは異なり、連鎖反応による暴走は起こらない。

新方式の核融合炉を開発したのは、ワシントン大学で物理学を研究するトーマス・ジャーボー教授と研究者のデレク・スザーランド氏。彼らが成し遂げたこととは何なのか。

磁場の発生方式を変えることでコストを削減

トーマス・ジャーボー教授

まず、ジャーボー教授は核融合技術について、次のように説明する(動画34秒~)。「核融合は、本質的にエネルギーの無限の源であり、クリーンエネルギーです。地球上に何もフットプリントを残しません。フットプリントなし、核廃棄物なし、温室効果ガスなし。基本的に理想のエネルギー源といえるでしょう」

核融合炉は21世紀後半には実用化されるのではないか、とみられている。無限のエネルギー源を提供する夢の発電方式ではあるが、そこにたどり着くのにたくさんのハードルを乗り越える必要があるためだ。

そのうち最大の問題は、太陽を模した原子炉を建設するためには、莫大なコストが必要とみられていることだ。

たとえば国際熱核融合実験炉(ITER)は、最も野心的な現在進行中の核融合炉プロジェクトだ。このフランスで建設された実験炉はTokamak型の代表例。Tokamak型は、核融合を起こす場所の周辺に高温のプラズマを保つために超電導コイルによって発生する磁場を使用する。

ジャーボー教授とスザーランド氏がつくりあげたDynomak型は、これまでの主流であるTokamak型とは異なり、プラズマに直接電流を流すことで、磁場を作り出す。

ジャーボー教授は、次のように語る(動画:1分38秒~)。「この方式を使えば、原子炉はかなり安くなります、なぜなら、扱うウォールと遮蔽するコイルが減るからです」

研究者のデレク・スザーラント氏

スザーランド氏は、こう話す(動画:1分45秒~)。「ここで私達が見つけたのは、電流をもっともっと効率的に持続させる方法で、Tokamak型で使われている従来の電流駆動方式より桁違いに効率的です」。

この小さな実験用の原子炉は、彼らのコンセプトの有効性を証明した。次の段階はスケールアップ。大型化を実現すると同時に、核融合反応を起こし続けることができるかどうか。そうした課題をクリアするために多くの英知が集まれば、たとえ21世紀後半であっても、少しでも前倒しをできるのかもしれない。

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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