尖閣めぐる日中対立は日米同盟再考する好機

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同盟強化への重要課題

首脳会談でオバマ大統領は、9月にニューヨークで菅首相と会ったときと同じように温かい態度を示すことになりそうだ。9月の会談では、アジアにおける広範な戦略の一環として、オバマ政権は、尖閣諸島をめぐる日中間の対立に関して日本を全面的に支援する旨の声明を発表した。

確かに、日本政府に対する米側の態度の変化は、中国がアジアで問題行動を起こす可能性に対抗する必要性が認識されるようになった、という観点でとらえられている。

しかし、それは同時に、少なくとも日米両国政府が戦略的課題のすべてについて、また具体的には安全保障・防衛政策に関する重要な政治課題について、議論する状況を作り出した。議論の課題は、たとえば日本の諜報能力の向上、潜水艦および空軍力の増強、北朝鮮の体制が崩壊した場合に備えた韓国との三国間協力などだ。

もっと広い意味では、中国があくまで平和的に地域的およびグローバルな舞台へ台頭するよう促し、また、「世界共通の良識」を求める自由およびリベラルな国際秩序の確保を目指す点において、日米両国は深いところで利害を共有している。

一方で、普天間問題は長引き、未解決のままである。米国政府関係者は、まもなく実施される沖縄県知事選挙で仲井眞弘多氏が再選を果たし、経済面での支援をテコに沖縄の反対をカネで片づけるという使い古した戦術が再び機能することを願っている。

あるハイレベルの米国政府関係者は最近、「たとえ最悪の事態になったとしても、米国は、普天間をめぐる問題によって日米同盟を崩壊させるようなことはしない」と認めた。

しかし、海兵隊が基地の移転問題で柔軟性を示し、妥協案の浮上を許容するまでには、日米同盟にはもう一波乱が生じる可能性がある。普天間問題が解決しないうちは、日米両国が同盟の新たなビジョン策定にしっかりと向き合うことは、難しいだろう。

(ピーター・エニス(在NY) =週刊東洋経済2010年11月13日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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