尖閣めぐる日中対立は日米同盟再考する好機

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 だが、不幸なことに、日米双方の誤解、見込み違い、了見の狭さが災いして、普天間問題は大問題と化した。これらの手違いはいまだ十分に是正されていない。オバマ政権は09年の発足直後から、沖縄県民の間で反対の声が強まりつつあったにもかかわらず、普天間基地移設計画の推進に固執した。

また、米国政府高官の中には、日本の民主党について好意的な見方をする穏健な人々と、民主党を危険なほどに親中・反米だと誤解する人々の両方が存在したが、前者よりも後者のほうが優勢だった。

鳩山政権下で事態が好転することはなかった。普天間問題ではさまざまな誤解や見込み違いが重なった。
米国政府内では、軽蔑的な態度が日本についての議論に及ぶようになり、そのために、鳩山首相に冷ややかな、突き放した対応をするようになり、鳩山首相はやがて辞任した。
日本に対するこの否定的な態度と並行して、オバマ政権は、通貨をはじめとするグローバルな経済問題から気候変動、北朝鮮問題まで、あらゆる面で中国との「戦略的なパートナーシップ」関係の構築に努めた。

しかし、オバマ政権は、近いうちに中国との間でそのようなパートナーシップを構築できる可能性は低い、という現実を認めざるをえなくなった。甘い期待とは裏腹に、中国は通貨問題や気候変動の問題に関して極めて非協力的であり、北朝鮮に圧力をかけることについても非常に消極的な態度を示してきた。また、中国は、近隣諸国に対して、とりわけ領土権に関連して、脅威を与えようとする不穏な動きを見せている。

その結果、オバマ政権は東アジアでの同盟関係を再び強化し、また、非同盟国との間では、政治および安全保障に関するより広範な関係の構築に取り組むようになった。これはひとえに、中国政府が拡大しつつある影響力をアジアで乱用するのを思いとどまらせようとするものだ。

このような流れの中で、日中間に東シナ海の尖閣諸島をめぐる争いが起こった。この出来事がきっかけとなって、米国政府内でこれまで日本を軽視してきたのは誤りである、アジアでの米国の戦略は日本と緊密に連携して遂行すべきだ、と主張し続けてきた関係者の見解が注目されるようになった。

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