産業天気図(建設業)鹿島や清水建設などスーパーゼネコンの「一人勝ち」鮮明の一方、中堅以下はますます苦戦

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バブル崩壊以降の建設投資の減少で、工事の量が激減する建設業界。ここ数年、建設会社の倒産件数は高水準にあり、帝国データバンクによると、建設業の2003年の倒産件数は5067件で全体の倒産の約3割を占めている。
 1992年に84兆円あった建設投資は、2003年には前年比4.2%減の54兆1700億円に減少した(建設経済研究所予測)。今年以降も、建設投資の減少が続くのは確実だ。
 そのなかで、約1兆円の売上高を誇るスーパーゼネコン(鹿島、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店)は、規模と信用力を武器にシェアを拡大させている。一方、中堅規模以下のゼネコンは苦戦が目立つ。3月末に一部上場の大木建設が民事再生法を申請して倒産したが、今後はますます中堅ゼネコンの倒産が拡大しそうな雲行きだ。一時、金融機関から債務免除などの金融支援を受けて体力を回復していた準大手ゼネコン各社(熊谷組、飛島建設など)も、信用力低下で受注を激減させている。財務体質が健全であることで業界内で優位性を保ってきた準大手ゼネコンの、西松建設、戸田建設、前田建設は、今後はスーパーゼネコンとのシェア争いの中では、安泰とはいえない状況になってきた。今後業界では「勝ち組」と「負け組」の二極化がますます鮮明化しそうだ。
 2004年は、建設鋼材価格の高騰がゼネコンに重くのしかかる見通しだ。商社は信用力や財務体質で納入するゼネコンを選別しており、一部では鋼材の入手難による資金繰り悪化に悩まされるゼネコンが出るだろう。鋼材の高騰がゼネコンの選別・淘汰を加速するのは必至だ。経営の悪化で、一段落していた合併や経営統合などの業界再編がまた活発化する可能性もある。
 2004年に注目される会社はやはり、スーパーゼネコン5社だろう。国が推進する都市再生事業など、準大手以下のゼネコンの技術力では施工できない工事を軸にシェア拡大が続く見通し。とくに在京3社(鹿島、大成建設、清水建設)が注目だ。鹿島は東京駅八重洲口の開発工事など多くの開発案件を抱えており、今年は不動産投資ファンドを設立する計画など話題が豊富。4月から新しい中期経営計画を開始した大成建設、あるいはシャープなど国内製造業の工場の受注が好調な清水建設は、今後の受注動向が注目される。ただ3月に施工会社が決定した六本木防衛庁跡地の工事のように、価格競争の激化が懸念材料だ。
 金融支援を受けたゼネコン各社が苦戦するなか、約5000億円の金融支援を受けた長谷工コーポレーションの好調も際立っている。首都圏でのマンション供給戸数は高水準が続く見通しで、今年は大阪での大型マンション建設も予定している。2004年度は現在進行中の再建計画の最終年度。計画どおりに進めば、スーパーゼネコンに次いで高い経常利益を出す会社になるため、投資家の注目が集まっている。
【吉川明日香記者】


 
 


 
 
 

ポイント:前半に業界全体の動向
     (受注や生産の月別等の実績と来年度の予想トレンド)、
     後半に個別企業の動向
     大きな企業や好不調の激しい企業の代表例を挙げて下さい。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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