元営業マンが語る「貯蓄型の保険は損する」の理由 「積み立てか掛け捨てか」の議論はもはや不毛

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しかし会社を辞め、生命保険の営業を始めた途端、収入が激減してしまいました。でも家のローンなどは待ってくれません。家計はどんどんマイナスになっていきました。

貯金もあまりなかったので、保険を解約して戻ってきたお金を生活費に充てることにしたのですが、途中で解約すると、それまで払ったお金よりも低い割合のお金しか戻ってこない低解約返戻金型終身保険でしたので、半分ほどのお金しか戻ってきませんでした。

「多くはない給料からなんとか月5万円を捻出していたのに」と、暗澹たる気持ちになりました。自分が保険商品を売る立場になってようやく、貯蓄型生命保険の欠点に気づいたのです。

商品種別に保険会社を使い分けよう

それなら、どこの会社の商品を選べばよいのか、迷う人は多いでしょう。まず頭に入れておいてもらいたいのは、会社の業績と商品の質は比例しないという事実です。なぜなら、保険は営業力の影響が大きいためです。2020年度の生命保険会社の国内売上高1位は第一生命ですが、商品が他社より優れていたというよりは、営業力があったとも考えられます。

反対に、売上順位が高くなくても、よい商品を出している保険会社はあります。また、死亡保険に強い会社、医療保険に強い会社、貯蓄型の終身保険に強い会社など、商品によってベストな会社は異なります。

1つの会社ですべての保障を揃えようとはせずに、商品種別に保険会社を使い分けたほうがよいでしょう。複数の保険会社の商品を扱っている「代理店」に相談するのも手です。

そして、保険選びに際してもう1つ重要なことは、保険は営業担当者による差がないことです。車を購入する場合は、営業担当者の裁量で値引きできたり、納車日時を早めたりできることもありますが、保険ではそうはいきません。

成績優秀な営業担当者から保険を買いたいと考える人は多いでしょう。ですが、保険については、むしろ売れている営業担当者は大勢の顧客を抱えているため、アフターフォローがあまり期待できないかもしれません。営業成績よりも、誠実に保険の仕組みを説明してくれる担当者から購入するほうがよいといえます。

ここまで説明しても、貯蓄型のほうが解約した際にいくらかでもお金が戻るのだから得するのではと考える人もいるかもしれません。

その考えを否定するわけではありませんが、貯金で備えられないリスクを回避するため、という保険の本質を考えてみてください。1000万円の保障では万が一の際、心もとありません。最低でも2000万円以上の保障が必要になります。

そうなると、貯蓄型であれば月々の保険料は数万円にもなってしまいます。対して掛け捨て型の生命保険は、加入年齢により金額は異なりますが、月3000円で3000万円の保障を確保できるものもあります。

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