大いなる不安定 金融危機は偶然ではない、必然である ヌリエル・ルービニ/スティーブン・ミーム著 山岡洋一/北川知子訳 ~経済危機は回避できる報酬制度などの改革を
評者 黒須 豊 スクウェイブ社長
リーマンショックを予言したと言われる著者が、マルクス、ケインズ、ミンスキーらの説を巧みに引用しながら、資本主義が本質的に不安定なものであり、危機が起こりやすい体質を元から有していると力説する。その内容は、経済に精通していない読者にもわかりやすく、経済学入門の授業のようだ。
読み解くにつれ、著者は、リーマンショック以前に危機を突然予言したわけではなく、当時すでに生起しつつあった必然的な危機について説明しようとしていただけなのだということに気づく。
危機は普通に起こることであるから、予想できるし回避する策を講じることも可能である。リーマンショックを100年に1度の珍事として扱うと気分が楽になるが、それは同時に予測不可能で不可避な事件ということになる。著者はその考え方を否定しているのである。
資本主義においては、経済危機における政府介入が重要だとケインズが初めて説いてから久しい。今般の危機においても、各国の政策がそれなりには機能した結果、大恐慌になることを食い止めたと著者は主張する。
一方で、うまく食い止めた結果、金融制度の根本的な改革が不十分となり、今回の危機を作り出した構造的な問題が解消されていないと警鐘を鳴らす。大規模な各国政府の介入は、金融システムに対するある程度の信任を回復させたが、危機の再来を防ぐための改革が実施されていないと著者は断じている。
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