「資格ランキング」ほど無意味なものはない! 己の「理想」と「現実」のギャップに目を凝らせ

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また、①も②も同時に勉強できる、という意味では、中小企業診断士は幅広な知識を身につけることができるので最適です。

私の弁護士の友人の中にも、中小企業診断士の資格を取ろうとしている人を何人も知っています。「法律の専門家がなぜ?」という感じがしますが、これは至極「あるある」な話。

弁護士という仕事は、単に事案に法律を適用するだけではダメで、どうしたら企業のビジネスにプラスになるか、というところまで踏み込んで考えられないと付加価値を提供できません。「法律的にはこうです」という回答だったら、誰がしても同じだし、下手したらネットでもそんな知識は手に入ります。

ただ、たとえば

「このまま突き進む選択肢と和解する選択肢があり、それぞれの結果の蓋然性はこの程度。経営者の立場としては、こことのビジネスの終了により新たに取引先を模索する必要があり、現在の市場環境を考えるとそのコストはかなり高い。総合的に考えるとここで和解しておいた方が無難」

といった経営的視点を踏まえたアドバイスができれば、ネットでは探せない付加価値が出てくるわけです。そうしたアドバイスの素養を身につけるために、中小企業診断士の資格はうってつけです。

このことから、法律の仕事ならこの資格、営業の仕事ならこの資格、といった考え方に意味がないということもわかっていただけるのではないでしょうか。資格は自分の「理想」と「現実」のギャップを埋めるためのもの。それ以上でも以下でもないことを覚えておいてください。

資格は通過点。だけど受かってから言え!

以上、自分を深く分析してその問題意識に沿う資格を目指すべきとお伝えしましたが、もうひとつ重要なことは、資格に受かったらそれでおしまいではないということです。資格取得は一定のレベルに達した証拠になりますが、その知識を生かすには実践で積極的に使っていくことが必要です。

そして、試験である以上、受かることも超重要。実務でよく使う知識は試験で問われることも多いですし、何より承認欲求が満たされ自信につながります。「受かったからってなんにもならないよ」というセリフは、合格した後に吐いてくださいね(笑)。

ご質問者様がさらなるスキルアップを果たされることを切に願っております。ではまた。

鬼頭 政人 資格スクエア創業者、弁護士

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きとう まさと / Masato Kito

1981年生まれ。開成中学、開成高校を特別優等の成績で卒業後、東京大学文科1類(法学部)に現役で合格。同大学法学部卒業後、慶應義塾大学法科大学院に現役で進学し、同大学院在学中に司法試験に一発合格。司法修習を経て都内の法律事務所に弁護士として勤務。ベンチャー企業を多面的に支援したいと考え投資ファンドに転職した後、22013年12月に資格試験対策をオンラインで提供する「資格スクエア」を創業、その後、ワンストップ電子契約サービス「NINJA SIGN」(後にfreeeサインと名称変更)も創業。著書に『東大合格者が実践している 絶対飽きない勉強法』など。

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