親の介護は、「胃袋と心」を掴もう
言い訳を止め、後悔の無い介護を

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早希さんですが、彼女の実母と同居していた早希さんのお兄様が、子供が生まれた後にすぐ、若くして病死されたのです。しかし早希さんの実母と兄嫁の“嫁姑の仲”がしっくりいかず、そんな兄嫁に、お母様を任せたままにするのは、早希さんにとってはできないことでした。

結果的に早希さんが実母を引き取り、同居することにしました。これに対し夫君も、別居している姑も、積極的に応援してくれたのだそうです。

ここからが普通と少し違うのですが、早希さんは、彼女が外出せねばならない日の応援には他の実の姉妹にではなく、汽車で1時間半はかかる、亡き兄の嫁である、稲子さんに頼みました。

「ちょっと兄嫁に対する意地もあったけれど、それよりも、嗜好も含めて母のことを一番よく知ってくれている人だし、母と義姉さん(兄嫁)は、亡き兄のことを誰よりも偲んで語り合える戦友みたいな仲。母が義姉さんとこれからも頻繁に繋がることは、孫に会えたり消息を聞いたりもできるし、そのことを大切にしたかったの」と早希さん。

兄嫁さんは早希さんが頼まない日でも、ときどき母上を訪ねてくれたり電話をくれたりするのだそうです。

“親孝行“には言い訳だらけ

以上のことから近藤様と一緒に考えたいことは、次のようになります。実家のお父様の世話は、お姉様たち3人で手が足りているとしても、貴女が嫁ぎ先で忙しかったとしても、貴女自身ももっと参加するべきだと思います。貴女にとっても、お父様なはずです。

親は子供を育てるのに、忙しい等の理由で手を緩めたり子供を見放したりしません。お蔭で今の私たちがあります。多くの人にとって、親から受けた愛情をそのまま返すのは到底不可能と思えるほど、子供は親の深い愛情と責任で育てられました。

その割にはさまざまな子供側の理由や事情で、老親を疎かにするケースが見受けられますが、大変悲しいことです。近藤様のお父上の年齢からお察ししましても、近藤様がお父上から受けた愛情を少しでもお返しできるのは今しかありません。

「お返し」という言葉が適当でなければ、貴女自身が娘として後悔しないために、今取ることができる最良の行為は、できるだけ実家へ通い、お父様の話し相手になることではないでしょうか。

最初は2週間に一度でも、受験生は自分でレンジで温めて食事をするとか工夫し、夫君や姑さんにも協力してもらって、貴女が数時間は実家で過ごせる時間を捻出するべきです。

私の経験ですが、私はお年寄りのお世話をするときは、必ず食事を共にするようにしています。どんなに忙しくとも、お惣菜をポンと置いて、挨拶だけで帰るようなことはしません。やはりローテーションを組んだ子供たちから、食事を届けて貰っていたあるお年寄りから、「お地蔵さんのお供え物のように、ポンと食物を置いて帰られると、かえって寂しい」と昔、聞いたことがあるからです。

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