日銀サプライズ緩和で1ドル=110円台定着へ BBHの通貨ストラテジスト・村田雅志氏に聞く

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日本銀行は10月31日の金融政策決定会合で追加緩和を決めた。長期国債について、保有残高で年間80兆円(約30兆円追加)を目指すとしたほか、ETFおよびJ-REITについて保有残高がそれぞれ年間3兆円(3倍増)、年間900億円(3倍増)に相当するペースで増加するように買い増すとした。

これについて、ブラウン・ブラザーズ・ハリマン・インベストメント・サービスの通貨ストラテジスト、村田雅志バイスプレジデントに話を聞いた。

――本日のサプライズ緩和をどう見た?

今回の2つの緩和策で重要なのはETFおよびJ-REITを買い増すという方で、まさに株価の持ち上げを狙ったもの。国債の買い増しはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が放出する分を引き受けて長期金利の低位安定を保つという程度で、効果は弱い。

キーワードは「期待形成」だ。株式市場を狙うと反応しやすく、効率がよいことは確か。株が買われれば円安が進みやすい。世界市場が再びリスクオンムードになっているが、これに日銀が加わったという意味は大きい。日本株だけでなく米国株の先物が買われて、ドル買いの力も加わっている。1ドル=111円まで円安が進み、結果的に、グローバルマーケットにも効果があった。

――賛成5、反対4でかつてなく真っ二つに割れた。賛成は黒田総裁と2人の副総裁、それに大学教授出身の宮尾委員と白井委員。民間企業出身の2人の委員と2人の民間出身のエコノミストが反対に回った。

今回の緩和が合理的に説明のつくものではなく、政治的なものだということの表れだ。なぜ今なのかというタイミングと資産の買い増しの必要性を合理的に説明することは難しく、株価狙いでしかない。「期待形成」を狙ってサプライズを演出するというのは黒田総裁のやり方だ。

――ここから先の為替見通しは?

緩和の規模は小さいので、ここからどんどんドル円相場で円安が進むということはないが、レンジが1ドル=105円~110円から1ドル=110~115円に移りつつあったところで、下値を110円に安定させる効果があると思う。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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