検察官は起訴休職が認められていないので起訴前の懲戒免職が一般的/最高検

検察官は起訴休職が認められていないので起訴前の懲戒免職が一般的/最高検

最高検察庁の池上政幸刑事部長は14日、大阪地検特捜部の元主任検事、前田恒彦容疑者(43)の証拠隠滅事件で記者団を集めて質疑応答をした。

記者団の質問は21日に拘留期限を迎える大阪地検の大坪弘道・前特捜部長や佐賀元明・元特捜副部長の処遇に集中した。11日の起訴直前に懲戒免職となった前田容疑者は全面的に罪を認めていたが、大坪前特捜部長や佐賀元特捜副部長の両容疑者は全面否認を続けている。推定無罪の原則のもと、無罪となる可能性すらある検察官を懲戒免職としていいのか。

池上刑事部長は「国家公務員法には(起訴された場合に休職扱いとなる)起訴休職の定めがあり、本俸その他の60%以内が休職中に支給される。だが、検察官には『職務を停止されない』という特則があり、起訴休職は適用されない。それで今までは起訴前に懲戒免職とされることが多かった。法的には起訴後に懲戒免職とすることもできるが、それだと起訴された翌日に登庁し検察業務を行うことができてしまうので、起訴直前の懲戒処分となっていた」とこれまでの経緯を説明した。
 
 そのうえで、「刑事訴訟の手続きと懲戒処分の手続きとは別。懲戒処分は人事院が公務員の秩序を維持するためにくだすもので、不服があれば(行政委員会の一つである)公平委員会に訴え出ることができる。公平委員会はそれぞれの言い分と証拠を持ち寄って、準司法的な判断をする。さらに公平委員会の判断に不服ならば行政訴訟を提起できる」と解説した。

仮に大坪前特捜部長や佐賀元特捜副部長が無罪となったら復職できるのか。池上刑事部長は「公平委員会で適切な処理がなされるのであろう」と復職の可能性に含みを残した。無罪となった場合、懲戒処分による不利益や逸失利益はどうなるのかにについては、「刑事訴訟法で一定の補償がなされるほか、国家賠償法の対象になりうる」とコメントした。

21日の拘留期限日に大坪前特捜部長や佐賀元特捜副部長を起訴できるのか。さらに10日間の拘留再延長が認められるのか。連日会見を開催している最高検は本日も午後3時からの会見を予定している。本日の会見対応予定者は最高検の伊藤鉄男次長検事。

前田恒彦容疑者の証拠隠滅事件

最高検によれば、前田容疑者は09年7月13日に大阪地検の庁内で、大阪地裁で係争中だった上村勉氏らの虚偽有印公文書作成等被告事件の証拠であるFD(フロッピーディスク)を、前田容疑者の私物のノートパソコンや高機能ファイル管理ソフトウェア、私物の外付けのFD読み取り機を用いて、FD内に記録されていた「コピー~通知案」と題する文書ファイルの更新日時「2004年6月1日、1:20:06」を「2004年6月8日、21:10:56」に改変。つじつまが合うように、他の文書ファイルとの順番を入れ替えたりした。これらの行為が、証拠隠滅の罪に当たると最高検は判断した。

前田容疑者は11日に懲戒処分となるとともに大阪地検に起訴されている。大阪地検が起訴したのは所管の関係で実際は最高検による起訴。

ここで高機能ファイル管理ソフトウェアとは、更新日時を改ざんするのみならず、多種多様な機能を有するソフトウェアを指す。前田容疑者が06年ころに使っていた私物のノートパソコンにインストールし、08年5月にパソコンを買い替えた際に、犯行に用いたパソコンにそのまま移植された模様。大阪地検の内規では、地検が管理するパソコン以外のパソコンを庁内で使用することを禁じていたが、前田容疑者は私物のパソコンを日ごろから使っていた。

前田容疑者がFDの改ざんを思いついたのは、証拠物の早期還付のために、証拠物を整理していたとき。「前田容疑者は『いやな証拠だな』と改ざんしちゃっている」(伊藤鉄男次長検事)。
 
 早期還付の過程で、当時の前田容疑者は、「FDの更新日時が6月1日のままでも、他の証拠で立件できると考えていたが、6月1日を更新日時とするこのFDが弁護側から証拠として示されれば、公判は紛糾するだろうと思った。6月1日という更新日時を弁護側に気づかれたくないという思いが強く、念のために変えておこう、ということだった。捜査の過程で(6月1日という更新日時の)疑問は解消できると(前田容疑者は)思ったのだろう」(伊藤次長検事)。
 
 厚生労働省の村木厚子元局長を有罪にするための積極証拠として用いるための改ざんではなく、特捜部の見立てと食い違うマイナスの証拠(消極証拠)を消しておきたいがための改ざん、というのが現段階での最高検の見立て。
(山田雄一郎=東洋経済オンライン)

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