「新幹線」をあきらめきれない面々 奥羽、羽越、山陰、中四国、東九州・・・

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こうした中、「次」を求める声が地方から強く上がる。基本計画線だった中央新幹線が、JR東海の計画発表からがわずか7年で着工認可したことを意識しているはずだ。

現在進んでいる整備新幹線の工事については、5年程度の開業前倒し論が出ている。「整備新幹線に係わる政府・与党ワーキンググループ」が立ち上がり、早期開業によって不足する財源問題を話し合っている。早期開業すると毎年国と地方自治体から拠出されている公共事業関係費等(合計1080億円/年)が事業終了にともないなくなってしまう。

5年前倒しなら5400億円が不足することになる。短縮した期間分の財源を求めて、JRが負担している整備新幹線の貸付料(整備新幹線は公共事業で建設、JRは受益の範囲内で貸付料を支払う)の増額や期間(現在は30年)の延長、JR九州株の売却といった案が飛び交っている。

予算は「次の新幹線」のために

ただ、仮に早期開業が実現し、毎年出ている1000億円強の予算をみすみす消滅させることはないと思われる。その予算は「次の新幹線」のために使われる可能性が高い。そういう意味でも地方が新幹線誘致を求めて先手を打つ動きはうなずける。現在、「地方創生」をめぐって議論が繰り広げられているが、新幹線が議題に挙がる可能性も否定できない。新幹線が今後、さらに伸びる余地はある。

そこで注視しないといけないのは、建設の費用対効果。新幹線が開通した地域の経済は確かに活性化しているが、本当に当初の目論みどおりの効果があったのか。そしてこれから建設を目指す路線は本当に採算が取れ、投入した費用以上の経済効果を生み出せるのか。しっかり検証していく必要があるだろう。

(撮影=尾形 文繁)

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宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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