34歳がんで逝った編集者がネットに刻んだ15提言 20年以上前のHPが今も当時のまま守られている

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そして1998年に入ると消化器系の不調が無視できなくなる。当時INTERNET Watchで編集長として連載していた「火曜コラム(旧金曜コラム)」の最終更新には兆しが残されている。日付は1998年2月17日だ。

<ここ1、2週間胃がむかつく。これに風邪も併発して気分も食欲も最低となり、ついにお休みを頂いた。健康なときに休むのならいろいろ楽しいこともできるのだが、なにせ病気で休むとなるとテレビを見るぐらいしか楽しみはない。>
(INTERNET Watch/火曜コラム/1998年2月17日「IDナンバーディスプレイと匿名性」/https://internet.watch.impress.co.jp/www/column/chief/index.htm)

不調が深刻化し病院で詳しい検査を受けると、小腸がんとの診断が下された。腹膜への転移もあり、「見込み違いで2回も手術をした」という。

「火曜コラム(旧金曜コラム)」に残る体調不良の兆し(筆者撮影)

その後回復して職場復帰を果たし、1998年6月に所属は書籍統括編集部に移った。山下さんが現存するKen's Home Pageの更新を始めたのはその翌月のことだった。同社スタッフ用のドメインを使い、「火曜コラム」と似たテイストの「Last 1 Hour」と、編集者としての考え方を綴った「Thinking Path」を気ままに更新するようになる。

サイトの更新時期にみる2つの山

Ken's Home Pageの更新の山は2つある。ひとつは1998年7月初旬から9月初旬までの2カ月間で、静養と体調回復を優先した本格的な復帰への助走時期にあたる。

<昨日(8/31)から今日にかけて3ページも書き上げている。これは何も会社をさぼって(まー結果的には会社には行っていないから同じか)いるわけではない。実は病院の待ち時間中に書いているのだ。1時間、2時間なら早いほう。3時間は当たり前。4時間あたりから「今日は遅いなー」などと感じていなければやってられないという、この病院の「待ち」のシステムはいったいどうなっているのだろうか?
(略)
術後一応快復している私だって、4時間も待たされた日には、もう会社には行きたくないぐらい疲れ切ってしまう>
(Ken's Home Page/Last 1 Hour/1998年9月1日「病人よ待ち時間に怒れ!」/https://www.impress.co.jp/staff/ken/last1/980901.htm)
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