高梨沙羅に謝罪文を書かせたのはいったい誰か 無自覚な「良い、悪い」のレッテル貼りが苦しめる

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高梨選手が2月8日にインスタグラムに投稿した謝罪文(画像:インスタグラム)

高梨選手は2度の「申し訳ありませんでした」という謝罪だけでなく、「日本チーム皆んなのメダルのチャンスを奪ってしまった」「私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまった」「責任が取れるとも思っておりません」「大変なことをしてしまった事深く反省しております」などと悲痛な言葉を重ねました。

その文章と同等以上にショックの大きさを物語っていたのは、写真や動画がベースのインスタグラムに、背景が真っ黒の写真をアップしていたこと。その内容が人々の想像を超える深刻なものだったからか、9日朝の時点で2万6000件を超えるコメントが寄せられました。

また、9日朝の情報番組でもトップニュース級の扱いで報じられ、「めざまし8」(フジテレビ系)の「AI集計 記事アクセスランキング」で1位、「SNSから抽出 最新ニュースワードンキング」で2位を記録。今回は圧倒的に擁護の声が多かったにもかかわらず、報道の中には、「一部で批判の声が挙がっていること」を紹介する番組もありました。

なぜ高梨選手はこれほど思い詰めたような謝罪文を書かなければいけなかったのでしょうか。

「良い、悪い」を勝手に決める人々

まず一部で挙がっている批判の声に関しては、気にする必要すらないでしょう。批判の声は酷いものであるものの、ごく少数派に過ぎない以上、それをわざわざピックアップするメディアのほうが不自然。むしろ「批判はけしからん」と言うことで番組や記事への注目を集めたいメディアによるものとみなすほうが自然です。

また、その数日前に報じられた高梨選手のメイクに対する批判を結びつけて考察するメディアや専門家もいますが、そもそもこのような批判ありきの少数派意見を採り上げて得をするのは、そのメディアや専門家だけ。一方、そんなマッチの火を大火にするような報道を見て声を挙げる人々も「メディアや専門家の誘いに乗っている」という点で、問題の一端を担っています。

もともと批判ありきの声を挙げる人は以前からいましたが、やはりごく少数派であり、取るに足らない存在にすぎませんでした。最大の問題は、そんな批判を浴びせる少数の人々ではなく、他人の言動に「良い、悪い」を勝手に決めつけて悦に入る人が多いこと。そんな人が多いから、本来取るに足らないはずの批判をピックアップしてしまうメディアが後を絶たないのです。

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