水ビジネスの幻想と現実[1]--脚光浴びる“86兆円産業”、日本勢に勝算はあるか

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圧倒的な存在感誇る水メジャー 日本勢は総合商社が主役に

自治体が水道事業を担う日本において、水の関連産業といえば、電気系を含めた設備や装置などの“機器売り”業者がほとんど。しかし、海外を見ると、民間が携わる事業領域はもっと幅広い。公共部門に代わって住民に水道や下水サービスを提供し、料金徴収まで行う民営水道事業の経営は、いわば水ビジネスの究極形。欧州や中南米の国々では、こうした水道業務そのものを民間企業が担っている。

そして近年、民間のビジネスチャンスとして特に注目されているのが、BOTと呼ばれるインフラ新設における民間資本の活用形態だ。下水処理場などを新設する際に、資金調達から設計・建設、設備発注、完成後の施設運営に至るまで一括して民間に委託する手法(図表参照)で、各種のインフラ整備が必要な新興国などで数多く採用されている。企業側からみると、建設費用などの初期投資を自治体から受け取る料金によって長期間かけて回収していくビジネスモデルだが、契約期間(通常は25年前後)中はライバルとの競合もなく、安定的な収益が見込みやすいと言われている。


こうした業務まで一手に手掛け、世界の水ビジネスで圧倒的な存在感を誇るのが、水メジャーと称されるヴェオリア、スエズの仏2大企業。処理場や海水淡水化プラントの設計・建設から、施設の所有、運営・管理、さらには民営水道事業の経営まで、水にかかわるあらゆる業務を手掛ける世界的な水の総合会社だ。水道民営化の歴史が古いフランスでノウハウを蓄積し、欧州全域、さらには米州やアジア、中東などにも進出。最大手のヴェオリアを例に取ると、世界60カ国以上で事業を展開し、2009年度の年間売上高は約1・4兆円、税前利益は1300億円近くに上る。

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