交通事故死の4倍!「住宅内の事故死」深刻な実態 年1万3000人も死亡、2021年のコロナ死に匹敵

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交通事故での死亡者数は年々減少しており、2021年は2636人と過去最少になった。減少の理由はさまざまあるが、その要因の1つに次々に導入される安全装置や機能の恩恵を受けやすいということがあるだろう。

自動車検査登録情報協会によると、日本における乗用車の平均使用年数が13.87年、平均車齢(新車登録してからの経過年数)が8.84年(いずれも2021年)としている。一方、住宅の場合は正確な統計はないが、平均耐用年数は一般的に30年程度とされている。

持ち家の場合には「一生で最も高額な買い物」となるため、自動車を買い換えるほどの住み替えの機会、それによるソリューションの導入機会が少なくなるわけだ。当然ながら、住み替えが進まないのはコストの問題がシビアだからだ。

断熱リフォームで行われる二重窓の設置イメージ(筆者撮影)

断熱リフォームを実施する場合は大規模な工事となり、費用は安くても数百万円になる。ましてや新築なら数千万円単位になるため、次々に住み替えをしたり新しい機能を積極的に入れることはかなり難しい。

こうした住宅ならではの事情が、住宅内での死亡者数が減らない要因の1つとなっているわけだが、住宅にもソリューションがないわけでは決してない。例えば、断熱リフォームでは低コスト、かつ短工期の仕組みもある。

ソリューションも登場しているが…

具体的には、開口部(窓など)は熱の移動が最も大きく断熱に影響が大きい箇所だが、ヒートショックが懸念される居室に限定して二重窓にするというものだ。壁を壊さずにすむなどのメリットもある。

前述した住宅内事故死の発生要因の1つである「窒息」については、例えば乳幼児がおもちゃや電池など誤飲し亡くなるというケースがある。これについても整理整頓を促す収納の工夫で、事故発生を未然に防ぐ提案を行っている住宅事業者がいる。

「転落」についても、子どもの犠牲が多い箇所。ベランダのフェンスを乗り越えることで発生することから、乗り越えにくい高さと握りにくい柵のフェンスを設置するなどで、安全性に配慮したものもある。

墜落事故防止に配慮されたベランダフェンスの事例(筆者撮影)

浴室では、子どもが目を離した隙に浴室に入り犠牲になるといった事故が発生している。これを防ぐために浴室のドアにカギを設置することが最近のユニットバスでは一般的になっている。

このほか、熱湯によるやけどや滑りやすいタイル上での転倒、打撲など、さまざまな危険が潜んでいるとされており、浴室は高齢者や乳幼児のいる世帯では安全のための配慮が求められる箇所といえそうだ。

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