中古車買取業者が語る「国産旧車価格」高騰の真相 バブル景気のように弾ける可能性もあると分析

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ロータリーエンジンを搭載し、一斉を風靡したマツダRX-7(写真:マツダ)

3については、先に紹介した表のようにマツダRX-7、とくに1991年発売の3代目FD型の買取価格が近年、最高で1000万円程度に高騰している要因についてだ。このモデルは、かつて数々のレースでもマツダに勝利をもたらしたロータリーエンジン搭載車。軽量かつ高出力が魅力のこのエンジンは、当時マツダ車の代名詞だったが、現在は厳しい排ガス規制をクリアできず、搭載車はない。だが、「いまだにマツダ愛好家の間では、ロータリーエンジン信奉者も多く、それがRX-7の価格高騰の背景にある」という。

4は、これも先述したハコスカやケンメリといったスカイラインの古いモデルをはじめ、元来から価格が高かった旧車の需要がより伸びたことで稀少性も上がり、さらに価格が上がっているということだ。1980年代以前に生産された国産名車の値段が高騰していることも、国産旧車の全体的な価格押し上げに関連しているという。

5については、コロナ禍により、例えば、「海外旅行などに行けなくなったかわりに、趣味として国産旧車を購入するユーザーが増えた」ことも要因のひとつだという。とくに富裕層には、ビンテージカー収集の愛好家も多く、旅行などそのほかの楽しみができないぶん、クルマによりお金をかける傾向にあるという。

6については、近年の話題になることが多い「クルマの電動化」も大きく関係しているということだ。カーボンニュートラルに向けた排ガス規制などの規制強化で、国内外の自動車メーカーは新型車にEVを市場投入する方向へ大きく舵を切っている。そうなると、ただでさえ数が減っているスポーツカーで、ガソリンエンジンを搭載するモデルはほぼ乗れなくなる。そこで、「今のうちに憬れの旧車を手に入れておこう」といった市場の意識が大きく働いていることも要因だという。

スポーツカー以外で注目、ランクル価格高騰の理由

菊地氏は、これらの要因がさまざまに重なりあうことで、人気が高い国産の古いスポーツカーの価格が急激に上がっていると分析する。ただし、これも先の表で紹介した、SUVモデルのトヨタ・ランドクルーザーについては別の要因があるという。それは、近年のアウトドアブームだ。

1951年発売の初代ランドクルーザーにあたる、トヨタ・ジープBJ型(写真:トヨタ自動車)

ランドクルーザーは、初代モデルが1951年に発売され、70年以上続くトヨタのロングセラーモデル。最近人気が高いクーペ的スタイルのSUVとは一線を画し、本格的な悪路走行性能を備えたクロスカントリー車的な装備が世界的に人気だ。2021年に発売された最新モデルの300系も依然として市場の支持は厚く、新車オーダーから納車までは4年程度の待ち状態だ(2022年19月19日次点)。

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