サンマ、今年は10月後半から安売り競争に? 昨年は不漁で店頭価格が急騰したが…

拡大
縮小

スーパーは通常、4キログラム箱入り23~27尾を仕入れる。これに適合しない小サイズのサンマは缶詰などの加工用や輸出、冷凍に回される。昨年はスーパーで使えるサイズが漁獲量の1~2割だった。今年は5割程度で、しかも1箱当たり23~25尾と肉厚なものが多く、流通量も増加した。

10月に入って卸価格は1キログラム400円前後で、スーパーでの店頭価格は1尾98円が主流。昨年は一回り小ぶりだったが、同時期の卸価格は1キログラム500円以上、店頭価格は1尾150円前後だった。

食品スーパー大手・マルエツでは、9月単月のサンマの販売額は前年同月比2割増だという。同社にとってサンマは鮮魚部門の売上高の8%程度を占める重要商材だ。

10月後半以降の店頭価格について「消費者は年に2~3回食べれば飽きてしまうので、水揚げ量が多い今年は価格勝負になりそう。大ぶりなサンマを販売し価格を維持していきたい」(商品本部鮮魚部の宮司智啓氏)。すでに一部では60円台の特売セールを実施しているスーパーもあるようだ。

運送費上昇が産地を圧迫

もっとも、店頭価格とは裏腹に、コストアップ要因は少なくない。漁船の燃料価格高騰に加え、トラックの積載量やドライバーの労働時間の厳格化による運送費の上昇が産地を圧迫しつある。

「卸価格が400円を切ると、逆算すると浜値は北海道で150円以下になる。こうなると、生産者は(鮮魚より輸送コストの安い)輸出や加工のための冷凍に回す」(大都魚類の取締役鮮魚特種部長・鉛山茂久氏)。昨年は加工用も枯渇し、台湾などからの冷凍輸入サンマが増加したが、今年はこの面でも心配はなさそうだ。

「週刊東洋経済」2014年10月18日号<10月14日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

石川 正樹 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT