首相と軋轢?尾身会長「突然の変身」が広げた波紋 一転して柔軟な対応を主張、自治体は混乱

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政府は19日夕のコロナ対策本部で、オミクロン株感染爆発に迅速に対応するため、13都県にまん延防止等重点措置の適用を決めた。期間は21日から2月13日までの24日間で、医療逼迫防止に向け、各都県による飲食店への営業時間短縮や酒類提供停止の要請などで感染の抑制を図る、とした。

13都県の内訳は、東京都と群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、岐阜、愛知、三重、香川、長崎、熊本、宮崎の各県。すでに適用中の沖縄など3県と合わせ、対象地域は計16都県に拡大した。

大阪、京都、兵庫の関西3府県も、21日に適用を要請することを決めた。北海道など他道県も早期に適用を要請する構えで、政府が対策本部を開く予定の週明けまでに適用対象が全都道府県の半数を超える可能性もある。

これも踏まえ、岸田首相は対策本部で「確保した医療体制がしっかりと稼働するよう各自治体にさらに準備を進めてもらい、メリハリの利いた対策で感染者数の増加を抑制する」と強調した。

政府は3週間余に設定した適用期間で、飲食店への時短要請は、各都県が認証した店で最長で午後9時、非認証店で午後8時までとした。ただ、酒類提供をめぐっては岐阜、長崎、宮崎3県が一律停止を決めたが、東京都などは認証店で認める方針だ。

政府の基本的対処方針では、ワクチン接種証明書か陰性証明を条件に行動制限を緩める「ワクチン・検査パッケージ」を原則停止した。しかし、自治体の判断次第で、対象者全員に検査を実施した場合は5人以上の会食や収容率100%でのイベント開催も可能となる。

人流制限から人数制限にシフトした理由

そうした中、基本的対処方針を決めた政府分科会の尾身茂会長は、19日午前の記者団との質疑で、当面のコロナ対策を繁華街などでの「人流抑制」から飲食店などの「人数制限」にシフトさせるべき、との考えを示した。

尾身氏は「今までやってきた対策を踏襲するのではなく、オミクロン株の特徴にあったメリハリのついた効果的な対策が重要だ」として、「『人流抑制』ではなく、『人数制限』が1つのキーワードになる」と強調。「今回は何でもやめるという、ステイホームなんて必要ないと思う」と語った。

尾身氏は、これまでのオミクロン株の感染経路の調査で、換気が悪い部屋などでの多人数の飲食と、大声でしゃべることなどで感染が起きていると指摘。「4人くらいとか、いつも行っている人と静かに飲食し、しゃべるときはマスクをしていれば、店を閉める必要はない」との判断を示した。

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