【産業天気図・情報通信】顧客あたり収入の減収続き「曇り」、ただソフトバンクは独走

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

情報通信業界は、2011年9月まで1年通して「曇り」止まりの鈍い景況感となる見通しだ。

移動体通信(携帯電話)では、NTTドコモ、KDDI(au)の業績は横ばいが続く見込み。ソフトバンクより新料金プランの導入が遅れた2社では、顧客あたり収入の減少がまだ続く。今10年度、来11年度までは逆風となるだろう。

NTTドコモは大型投資が一服したほか、設備の減損なども実施しており、減価償却費の低減で減収影響を埋め横ばいに持ち込む算段。

新料金プランの導入が08年と最も遅れたKDDIの携帯電話事業は09年度、10年度と2期連続の減益が濃厚。来11年度も減益となる可能性もあり、この分野では最も厳しい。出遅れが指摘されていたスマートフォンを集中投入しデータ通信収入拡大につなげる。全社では前期に実施した減損の効果で、前09年度400億円超の赤字だった固定通信事業(固定電話やブロードバンドなど)が黒字化する見込みで、これが携帯電話事業の減益を補う。

この2社に対し、絶好調なのがソフトバンク。終わった10年4~6月期の移動体通信事業は営業利益が前年同期比70%増の1026億円。アイフォーンの販売好調に加え、3月末に古い第2世代通信サービスが終了。前期激しかった顧客流出が一段落したことで、顧客純増数では2位のNTTドコモ以下を引き離している。

また、基本料金が安い新料金プランを06年から導入してきた同社では、このプランの契約率がすでに100%近くまで高まりつつあり、顧客あたり収入の減少インパクトも一巡。今期より上昇に転じている。会社は今期営業利益5000億円の予想を掲げるが、「東洋経済オンライン」では営業利益5500億円(期初同5100億円)と予想を引き上げている。

固定通信分野では、NTT(日本電信電話)の業績はここ数期横ばいが続いている。NTT東西やNTTコミュニケーションズが手掛ける固定電話の減少が続くなか、NTTデータの手掛けるシステム開発の需要底打ちや団塊の世代の定年退職による人件費減などで営業利益横ばいを維持する。2860億円を投じ買収を発表した南アフリカの通信ネットワーク構築会社、ディメンション・データ社の連結開始時期はまだ未定だが、NTTは米国会計基準のためのれんの定期償却がなく、すぐに業績貢献してくる見通し。「東洋経済オンライン」は今期3ヵ月連結想定で、売上高900億円、営業利益30億円程度の寄与を見込んでいる。
(桑原 幸作=東洋経済オンライン)

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