「親の会社を継ぐ」という重み ニッポンの中小企業、2社に1社は存続の危機!

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「実はウチの会社を辞めます」

今年2月。いつもはこちらから声をかけて飲みに行く会社の後輩から、珍しく「飲みましょう」と誘われたので、何の話かと思ったらこの春に依願退職することを切り出された。なぜ?聞けば「親の会社に入って、ゆくゆくは社長を継ぐつもり」だという。

彼は入社7年目。仕事が脂に乗り、成果も残していた。やりがいを持って仕事に取り組んでいる印象があった。筆者も転職の経験があり、会社を辞める覚悟についてはわかっているつもりだったが、正直言って残念な気持ちでいっぱいだった。

中小企業の事業承継は待ったなし

およそ半年後。ひょんなことから、彼を取材することになった。正確には彼の父親と一緒に。東洋経済は10月14日(火)発売の『週刊東洋経済』で総38ページの大型特集「会社の片づけ」を組んだ。いわゆる中小企業の事業承継や売却(M&A=企業の合併・買収)、廃業がテーマの企画だ。その中で、事業承継の実例の一つとして彼と彼の父親に話を聞かせてもらうことになったのである。

日本では「今後10年で全国の中小企業(小規模事業者を含む)約385万社の半数が存続の危機を迎える」と言われている。大げさな話ではなく、経営者の高齢化に加えて後継者不足が深刻化している。帝国データバンクによると、2013年で全国約100万社のうち実に52%の経営者が60歳以上。つまり、今後10年間で2社に1社の社長が引退適齢期を迎えるのに、社長の交代率(過去1年間に社長交代があった企業の割合)はわずか3.67%しかない。

中小企業オーナーの選択は3つ。「子どもや従業員に会社を継がせる=事業承継するか」「第三者に会社を売る=売却するか」「自ら事業をたたむ=廃業するか」だ。売却や廃業は、これまで自ら経営してきた会社を「片づける」ことにあたる。さらに会社を継がせる場合も、会社の資産や事業内容を「片づけて」からでないと渡すのは難しい時代になった。中小企業の事業承継は日本経済の重要テーマで、このごろ中小企業基盤整備機構や金融機関などが開催する「事業承継セミナー」は、どこも盛況だ。

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