レアメタル争奪戦の裏側、レアアース狂想曲と中国の対応

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 中国からの裏情報では、8月13日にレアアース専門家総勢60名が全国から集まり、商務省の決定について活発な討論がなされた。国の方針とは裏腹に、中国の民間企業も迷惑を被っているのだ。その討議の中で、政策には一貫性がなく国際貿易ルールを無視しているのではないか、との意見が出ている。外資との合弁企業も一律に輸出枠を削減するのは合弁設立当初の外資優遇政策を無視したもので、国際的な信用を守れない中国という印象は避けられない。

今回の商務省の決定は、レアアースの内容を理解していない政府幹部の無知と、政治的要素も絡んだ無秩序な政策との声も出ている。温首相の発案か否かは明確ではないが、いったん決まったからには、簡単には変更されない。中国は世界市場の90%以上を占有しているが、世界中の希土類産業(取引先)からの信頼を失い、資源開発の多様化が今後世界で計画されることは確実だ。その結果、中国のレアアース産業がビジネスチャンスを喪失することになる。つまり短期の利益は取れても、長期的には誰の利益にもならないのだ。

資源開発が世界で本格化

もともと、日本が中国に希土類の分離技術を教え、同時に希土類の用途開発をしてきた事実がある。中国のレアアース産業にこれまで貢献してきたのは、日本の独自技術と市場開発であったことを中国政府は忘れている。日本の首脳が北京で意見交換するなら、過去の経緯をアドバイスして、嫌味の一つも言うべきだった。

ただし、もっと重要なことは人為的かつ作為的な資源政策は長続きしないし、逆に市場を混乱させるだけで、結局は中国の国益にならないことを教えてあげるべきだ。いずれにせよ、現状を打開するには日本の産業界として何らかの対応策をとることも喫緊の問題だ。短期、長期の対策に分けて対策を考えてみたい。

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