体制一新で臨むイオン、SPA始動も前途多難

拡大
縮小


 GMSでは、盆や年末年始など食品売り場の混雑時は、客入りの少ない衣料品売り場からレジ応援部隊や品出し要員を招集する。当然、衣料品の接客能力は落ちる。すると店長はGMS全体を俯瞰し、売上高が落ちた衣料品売り場の社員をさらに絞る。結果、「GMSの売り場のほうには人がいないので、接客担当のいる外部テナントは客を簡単に奪える」(衣料品テナント)状況に陥る--。GMS全体の1部門として組織を編成していては、衣料品の売上高が縮小していくのは必然だった。

そこで荻原氏が提案したのが、「販売する人間も含め、組織としてGMSから独立を」。衣料品の分社化だ。イオンリテールの100%子会社ながら今年3月、トップバリュコレクションは独立会社としてスタートした。店長ほか社員はグループ内で公募。3倍を超える競争率を乗り越え入社した従業員36名は、GMSのほか、グループ内のコックス、ローラ・アシュレイなどの衣料専門店、ニューステップなどの靴専門店と出身は多岐にわたる。彼らはGMSとは別の人事体系で雇われることになる。

分社化により、自らをよりシビアな環境に置くことを意図した。別会社である以上、社外テナントと同等の扱いだ。歩合家賃も支払えば、販売不振となればお払い箱行きも免れない。「同じ組織内なら、まぁいいかで済まされるかもしれないが、われわれにそれはない」(荻原社長)。

その本気度は、6月以降商品什器や壁面の柄、芝生をイメージした店舗回りのグリーンのじゅうたんなど、1号店の売り場を6回も作り替えたことからもうかがえる。さらにオフィス内にシミュレーションストアというモデル店を設置し、月・火曜日に最新店舗モデルを構築、水・木曜に各店に配信して週末に向け演出を変え、つねに新しいものを発信する体制を整えた。その鼻息の荒さに、「商品を売りさばける従業員が育てば、化ける可能性もある」と外部テナントの間ではトップバリュコレクション脅威論も出始めた。

成功のカギは完全独立を貫けるかどうかだ。テナント出店する専門店にすら、「強制ではないが、催事等の応援要請がある」(関係者)という。新会社の社員がこれまでの習い性でGMSの応援に回るようでは、分社化は絵に描いた餅で終わる。


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