「社員使い捨て企業」の説明会が熱狂的なワケ 不安な学生心理に付け込む採用法とは

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一方で、会社説明会の段取りが悪すぎる、というケースもあります。社員を使い捨てにするような企業には長い間勤めているような優秀な人材が、あまりいません。いたとしても、そういった社員は営業に配属されるので採用活動にはタッチしないことが多いのです。優秀ではない社員は社内では冷遇されているのでモチベーションは低い。こんな社員たちが説明会を仕切るので、説明会がスムーズに進行しません。

社員の服装にも気をつけてください。私が取材をする中で、身だしなみが乱れている会社には問題が多いように思います。大切な人材を獲得するための説明会では、会社の印象を良くするために清潔感のある、緊張感を持った身だしなみをするのが普通です。よれよれの服を着ているような社員に採用を任せるはずがないのです。

業容が分からないパンフレット、豪華な食事会

Q2:採用パンフレットやHPに特徴はありますか。

大手有名企業ではないのに、採用パンフレットが分厚くて豪華な場合があります。また、採用ウェブサイトがとても凝っているうえに、高級感がある場合もあります。こうした企業は会社説明会に来た学生を、採用ツールで釣り上げようとしている可能性が高いので気をつけてください。

パンフレットやサイトの中身をしっかりと見てください。若い社員を使ったイメージカットが多すぎないか。会社のクラブ活動や社内行事などについてばかり書かれてはいないか。肝心要の業績や業務内容についての説明が少なくないか。まともな会社は、業績、財務状況、製品や業務内容など、具体的な情報を中心に掲載するものです。

採用ツールが豪華なうえ、会社説明会が一流ホテルだったら、さらに用心してください。「こんな立派な会場で説明会を開催するのだから、この会社は有名ではないが優良企業だ」と思い込んでしまう学生は少なくありません。また、豪華な雰囲気に圧倒されてしまうこともあるでしょう。

ちなみに、内定式や入社までの間に開催される食事会も派手で豪華なことが多いです。日頃、チェーンの居酒屋にしか行っていない学生が高級店に招待されれば、気持ちが舞い上がってしまいます。表面的な豪華さで学生の気を引くというのが企業側の作戦なのです。

こうした企業の採用担当者には、採用人数のノルマがあります。目標人数に達しなければ上司から厳しく叱責されるので、採用担当者も必死です。いったん内定を出した学生には絶対に逃げられないように、あらゆる手段を講じてきます。

※就活生のみなさん、就活に関する質問がございましたら、こちらにご記入ください。当連載の中で回答をしていきます。

(撮影:梅谷秀司)

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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