日中韓の歴史問題、知らないとケガします 不信と憎悪はなぜ続く

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ちょっと乱暴なたとえだが、こう考えてみらどうだろう。賢明な大人ならば、ある宗教を信じている人にいきなり、その宗教を全否定するようなリスクは冒さないはずだ。歴史認識に関しても同じようなところがある。同じ事実があっても、それをどう解釈するか、歴史の中でどう位置付けるかは、国によって見方が違う。

歴史認識をめぐって、相手の国の考えに迎合する必要はない。だが、最低限の知識がなくては、相手が何を言っているのかもわからない。基本的な史実と、中国人や韓国人の内在的な論理はわきまえておきたい。それが、中国人、韓国人だけでなく、外国人とつきあうための作法であり、自分の身を守ることにもつながる。

韓国との間で大きな懸案となっている慰安婦問題では、最近大きな動きがあった。朝日新聞が、日本統治下の朝鮮で慰安婦が強制連行されたと報じた一連の記事を取り消したのだ。吉田清治氏(故人)という人物の証言を再検証し、虚偽と判断した結果だ。

誤報の責任は大きいが・・・

誤報の責任は大きい。しかし、朝日の記事だけが「慰安婦問題」を形成してきたわけではない。韓国では「強制連行」は元慰安婦の証言をもとに事実とみなされており、朝日の記事取り消し後もそれは変わっていない。韓国政府はこれからも日本に「慰安婦問題の解決」を求め続けるだろう。

中国は来年、つまり2015年にロシアと共同で対日戦勝70周年の祝賀行事を開く予定だ。さらに慰安婦問題を抱える韓国とも歩調を合わせており、日本に「国際秩序への挑戦者」というイメージをつけようとしている。中国では、昨年12月に靖国神社を参拝した安倍晋三首相は、戦前の軍国主義を復活させようとしているとみなされている。

平和国家として歩んできた戦後の日本に中国がいうようなレッテルがふさわしいとはとうてい思えない。適切な反論が必要だが、簡単に解決する問題ではない。それだけに、来年にかけて「歴史問題」の修羅場が訪れることにビジネスマンは敏感でありたい。

東アジアは深刻な歴史問題を抱えているが、救いは宗教対立がないことだ。お互いに共通の利益を目指して対立を乗り越えることは可能なはずで、それこそがビジネスマンに期待される役割だ。

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週刊東洋経済編集部
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