産業リサーチ(鉄鋼) 日本は新日鉄、JFEの二大勢力に

日本の鉄鋼業界は「失われた10年」と呼ばれた赤字続きの苦境を脱し、「高炉大手5社」は新日本製鉄とJFEの2大グループに再編されつつある。
 再編で先行したJFEグループは、2003年4月に川崎製鉄とNKKの鉄鋼事業を統合させ、新たにJFEスチールを設立。これで粗鋼生産量が2500万トンに達し、新日鉄と双璧をなす規模にのし上がった。新日鉄連合(新日鉄、住友金属工業、神戸製鋼所)は、株式持ち合いを軸に生産・物流面での関係強化を図る一方、ステンレスなど品種ごとの合弁設立を通じて提携強化を進めている。業界シェアが高い新日鉄の場合は、独占禁止法の制約上、他社との単純合併が難しく緩やかな提携戦略を採らざるをえない。
 こうした再編は、何より鋼材価格の回復を狙ったものだ。再編の過程では「業界ベースで約1000万トン」(三村明夫・新日鉄社長)の設備が削減されるため、従来のように余剰設備を見透かされ、ユーザーから鋼材を買い叩かれることは難しくなると鉄鋼メーカーはそろばんを弾いている。
 ここ数年、川上産業の鉄鉱石、石炭産業が世界3大グループに集約される一方、川下で主要ユーザーである自動車産業では世界6大グループのシェアが8割を超えている。その間に挟まれて再編が遅れた鉄鋼業は、利益を稼げない状況に追い詰められた。米国では大手鉄鋼会社の経営破綻が相次ぐ一方、日本でも日産自動車の鋼板調達シェアの変更を機に、「世界で最も鋼材価格が安い市場」と呼ばれるまで値崩れが進んだ。
 しかし2002年初めを起点に状況が変わりつつある。ヨーロッパで粗鋼生産世界首位の鉄鋼メーカー・アルセロールが誕生。米国でのセーフガード(輸入制限措置)発動をきっかけに、世界規模で鋼材価格高騰が始まった。アジアでは中国での鋼材需要が急増し、粗鋼生産世界第2位のポスコ(韓国)と日本の鉄鋼メーカーが輸出でしのぎを削っている。
 2003年度は新日鉄で連結経常利益倍増、JFEで7割近い増益を見込む。
 JFEスチールの初代社長に就任する數土文夫・川崎製鉄社長は「5~6年先には世界の鉄鋼産業は15~16社に集約される」と予測する。収益力の回復は企業数の減少と表裏一体の関係にある。
 日本企業の再編も、世界規模での業界構造の変革を反映している。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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