「追加接種」ファイザーとモデルナどちらが正解? 各社が開発急ぐ「オミクロンワクチン」の是非

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変異1つひとつは、いわば“プチ整形”にすぎないが、32カ所もあればウイルスの顔つきはすっかり変わる。「免疫からの逃れやすさ」を促す変異も生じており(11月29日「COVID-19 South African Online Portal」)、過去の感染や従来のワクチンの情報に基づく “顔認証システム”は、容易にすり抜けられてしまう。

データベースにオミクロン株の情報を追加させよう、というのが「オミクロンワクチン」だ。

だが、オミクロンワクチンが本当に必要かどうか、科学者の間には疑問の声もある。実用化される頃には、オミクロン波が収束している可能性もあるからだ。

世界3大学術誌の1つ『Science』では、オミクロンワクチンよりもむしろ、いかなる変異にも耐えうる「汎コロナウイルス感染症ワクチン」に注目している。人類と新型コロナとの「いたちごっこ」に終止符を打つ切り札になるかもしれない。

すでに複数の汎コロナワクチンが、霊長類などの動物実験で良好な成績を上げ、臨床試験に入っている。

それでも新型コロナは「ただの風邪」?

とはいえ今この瞬間、オミクロン株の勢いは猛烈だ。

12月22日、世界保健機関(WHO)のハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は、オミクロン株は英国、デンマーク、ポルトガルですでに置き換わり、「向こう数週間で」欧州全体で主流になるとの予測を示した(12月23日「ロイター」)。

英国では新型コロナ新規感染者が1日あたり10万人を超えた。オミクロン株の初報告から1カ月足らず、もちろん過去最悪の記録を更新中だ。

アメリカCDC(疾病対策センター)も、12月18日時点でオミクロン株の割合が感染者の73.2%に上ったことを公表。その2週間前には0.7%、1週間前にはまだ12.3%だった。ワシントン州、ニューヨーク州、フロリダ州などでは、すでに9割超となっている。

だが一方で、新型コロナはこの数年で「風邪」レベルに落ち着く、という話も絶えない。

WHOは12月9日、南アの初期データに基づき、オミクロン株に「感染しても重症化しにくい傾向」が見られると指摘した。

「しだいに感染力は高く、毒性は低くなっていく」のは、“ウイルスあるある”だ。

変異はウイルスにとって有利・不利を問わずランダムに生じる。ヒトを即死させるほどに強力な毒性を持つこともあるが、それは自滅と同義だ。ウイルスは細菌などと違って自力では存在も増殖もできず、宿主(ヒト)の細胞に入り込み、その機能や材料を拝借して増えていくからだ。

むしろただの風邪のように、宿主を「生かさず殺さず」程度の毒性に変異したものが、駆逐もされないままゆるゆると生き延びていく。

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