学校教師たちの“SOS”を受け止めろ! その教育現場に夢はあるか
もう一つは、不安定な身分の教師の存在だ。小中学校は公教育でありながら、企業のように非正規雇用の教師を大量に雇用している。その数は、義務教育の小中学校だけで12万人弱。高校や養護学校、都道府県などが独自で採用している非正規教師を含めると、全国で20万人に上るとみられている。彼らは担任を受け持ち、授業も同じように教えている。正規雇用の教師と仕事内容はほとんど変わらなくても、非正規というだけで給与をはじめとする待遇は劣る。
都道府県によってこの非正規比率は異なり、埼玉県や沖縄県、奈良県、三重県などの比率は高い。予算や都道府県教委の方針によって、使い分けされているようだ。教育委員会の中には、高すぎる非正規比率を問題視し、比率の低下を目標とするところもあるが、10万人単位の“非正規”教師が今日も教壇に立ち続けている。
それでも「教育改革」は止まらない
こうした現場の疲弊にも関わらず、政府や自治体はトップダウンで教育改革に明け暮れている。学制改革や民間人校長の登用、道徳教育の強化、英語教育の早期化、教科化などなど。次から次への新しいメニュー、対応が打ち出され、そのことがさらに教師の負担を増している。
数字でみると、日本の公教育はけっして卑下するようなものではない。15歳児を対象にOECDが、生徒の学習到達度調査として発表している「PISA」によると、日本は上海や香港、シンガポールに次ぐ上位の成績を収めている。だが、教育現場の疲弊は深刻だ。
大阪大学大学院の小野田正利教授は「ここ20年間、学校に『できないこと』『不可能なこと』まで押しつけてきた。学校の守備範囲を確定しないと学校はもたない」と警告する。一度立ち止まって、「教育改革病」を考え直さないと、肝心の教育の支え手である教師が燃え尽きてしまう。
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