産業リサーチ(ビール・飲料) 酒販自由化目前で再編の真っただ中に、目が離せないサントリーの動き

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2002年の酒類業界を一言でいうなら、「業界再編」の年だった。アサヒビールが協和発酵工業と旭化成の酒類事業を買収したのに続き、キリンビールが「杏露酒」で知られる永昌源を買収。いずれも親会社が非コア事業を売却したものだが、再編の少なかった酒類業界には大きな衝撃をもたらした。背景にあるのは、2003年9月に予定される酒販免許の完全自由化だ。今後は100円ショップから町の青果店までが酒販売に参入するとみられ、各社は新たな売り場獲得に虎視眈々となっている。
 一歩先んじるのはサントリー。ワインとウイスキーから始まった同社は、ビールからリキュール、清涼飲料まで他の追随を許さぬ幅広い品ぞろえが強みだ。2002年末には米最大のワイン商ガロと提携、「ナンバーワンと組む」戦略も際立つ。ビールでは国内万年4位だが、他の酒と一緒にビールを売り込むことによる増販効果が期待できる。2001年にビール販売量首位に立ったアサヒも体制づくりを急いでいる。ビール「スーパードライ」で栄華を極めたアサヒだが、ビール市場縮小の前に酒の総合化を目指さざるをえない。有利子負債削減にメドがついた今、キャッシュをどこに振り向けるかが注目される。
 一方、ビール首位の座をアサヒに奪われたキリンだが、いまだ収益性、成長性両面で基盤は磐石。酎ハイ「氷結」など自力での新カテゴリー創出も順調だ。優良投資先である豪ライオンネイサンやフィリピンのサンミゲルなど海外ビールメーカーとのアジアにおける事業提携も進行中で、新たな可能性を秘める。
 規模ではビール大手に劣る洋酒、和酒メーカーはどうなるか。ワイン2位のメルシャン、中堅の合同酒精、ビール専業ながら万年ビール3位のサッポロビールなどにとっては、2003年は存在意義を問われる節目の年となる。
 一方、清涼飲料業界だが、過去数十年間はコカ・コーラの独壇場だった。だが、近年はサントリーなど資金豊富なビール系メーカーの追い上げが著しい。緑茶「お~いお茶」で急成長した伊藤園、乳酸菌飲料の「カルピス」など、特定分野に強みを持つ企業の活躍も目立つ。規模か個性か。2003年は優勝劣敗が一段と分かれる年になりそうだ。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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