創業者たちが大手テック企業を「去り始めた」事情 ジャック・ドーシーはツイッターCEOを退任

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11月29日付でツイッターの経営トップを退いたジャック・ドーシー。彼をはじめ、テック業界の大物たちに何が起きているのか(写真:Eva Marie Uzcategui/© 2021 Bloomberg Finance LP

2015年にジャック・ドーシーが暫定CEOとしてツイッターに復帰したとき、彼は同社のアプリを「世界意識に最も近いもの」と宗教にも似た熱意で褒めちぎった。

だが、そのドーシーは11月29日付で経営トップから退いた。従業員宛のメッセージには、ツイッターは「創業者の影響や指示から解放されて自立すべきだ」と記され、CTOのパラグ・アグラワルがCEOに昇格し、ブレット・テイラーが取締役会議長に就任することが発表された。

ドーシーの退任は驚くようなことではない。ドーシーは過去1年以上にわたって、アクティビスト(物言う株主)のエリオット・マネジメントから業績改善を求める圧力にさらされてきた。ドーシーは自身が共同で立ち上げた急成長中の決済サービス企業スクエアの経営にも携わっており、どこかの段階でどちらかのCEOから退くとみられていた。そして下されたのは、ツイッターを去るという決断だった。

帝国を後に起業の熱狂に舞い戻る

とはいえ、ドーシーをはじめとするテック業界の大物たちには、もっと別のことが起きているように見える。彼らはマネジメント(経営・管理)に飽き飽きしてじっとしていられなくなり、冒険を求めて会社を飛び出すようになったのだ。

冒険心を抑えられなくなったジェフ・ベゾスは今年、アマゾンのCEOを辞めて、子ども時代から夢想していた宇宙旅行を実現した。グーグルを創業したラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンも2019年に経営トップから退き、以降は飛行船や空飛ぶタクシーなど未来チックなプロジェクトへの投資を進めている。

マーク・ザッカーバーグは今もフェイスブックの経営を続けているが、社名を「Meta(メタ)」に変更。ネット上の仮想空間「メタバース」へと事業の軸足を大きく移すことで、大規模化してつまらなくなった企業カルチャーに新奇性とワクワク感を注入しようとしているように見える。

ここに来てテック企業幹部の退任が相次いでいる背景には、シリコンバレーのテック企業が巨大化したという現実がある。企業規模があまりに大きくなり、そしてあまりにも儲かるようになったため、もはや先見の明のあるビジョナリーな創業者は必要なくなった。利益を生み出すマシンをしっかりと回し、致命的なミスを回避できる有能な管理者がいればそれで十分、という状況になったのだ。

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