質素を尊んだ独自の生活哲学 「六本木の赤ひげ」アクショーノフさんを悼む⑥

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静かに営まれた通夜の様子

アクショーノフさんのクリニックには、多い時には院長のアクショーノフさんのほか、医師2人、看護師、事務員ら6人が詰めていた。スタッフのほぼ全員が外国語を話せるのが院長の自慢で、「これだけ外国語に不自由しない病院・診療所はここだけではないか」と話していた。

このクリニックの特徴は、診療を受けに来た外国人からパスポートや外国人登録証明書の提示を求めないことだった。クリニックに備え付けのアンケート用紙でも、本人が書く欄は住所、氏名、生年月日、連絡先の電話番号、それに男女別の項目しかない。とくに不法滞在を気にしている外国人は当局に知られるのを極度に恐れていたので、それは聞かないことにしていたのだ。

院長は「病気に関係ないことは患者に聞きません。また、病気以外については医者が患者に聞く権利もありません」と語っていた。法律よりも、患者の健康や人権を守ることが大切だという院長の基本方針が徹底していたのである。

また、診療費、治療費については「金のある人からはきちんと取る。ない人にはとりあえずタダで診てあげる」というのが院長の大原則だった。このクリニックでは、日本の健康保険は使えないので自由診療となる。一般的に、自由診療は健康保険より高いと言われているが、院長は「外国人の場合、うちのクリニックに来れば日本の医者へ行くよりずっと安い」と断言していた。

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