"iPhone 6"リーク情報に欠けているもの これはスマホの今後2年を占う重要製品である

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サムスンのGalaxyシリーズが世界ナンバーワンシェアを獲得できた理由は、圧倒的なスペック差を誇り、機能面でもアップルなどが生み出す新しいトレンドを素早くキャッチアップするソフトウェア開発部隊を抱えていたからだ。

ところが、ベンチマークとしてきたアップルもまた、イノベーションが停滞している。”先生”とすべき相手を見失ったのだ。使用する半導体やディスプレイでの差異化も、もはや難しい。さらに基本ソフトであるAndroidが熟成し、サムスンが独自開発していた機能やユーザーインターフェイスデザインなども相対的に魅力が落ちてしまった。サムスンは市場におけるリーダーになったものの、市場を牽引するアイデアを出せずにいる。

先日、サムスンは新しい旗艦モデルの不評を受け、新デザインラインのGalaxy Alphaを発表したが、iPhone 5や予想されるiPhone 6のデザインイメージを取り込んだ、オリジナリティを感じられない商品だった。サムスンのメッキは剥げ落ちようとしている。

市場の「今後2年」を占うものに

ややAndroid端末に関する話が長くなった。「なんだ、それはローエンド市場の話ではないか。アップルが狙っているのはそういう市場ではないから的外れだ」との声も聞こえてきそうだ。が、これはアップルも無関係ではない。こうした現象はいずれ中位モデル以上にも伝搬していくものだ。

どれだけ洗練されたデザインを心がけたとしても、ハードウェア、基本ソフトの両面で進化を続けなければ、上位モデルとしての立ち位置は失われていく。その視点から考えると、現在までにリークされている情報では、まったく物足りない。果たしてアップルは、スマートフォン市場全体の進むべき方向、領域を示唆するまったく新しい、生活を一変させるような魅力的なデバイスを披露できるだろうか。

いや、スマートフォンと括るべきではないのかも知れない。アップルはiPhoneという端末と、それを取り囲む周辺デバイス、アクセサリ、アプリといった市場を、さらに前進・発展させるアイディアを持っているのだろうか。

アップルは通常、2年に1度、iPhoneのシャシー設計を大幅に変更している。今回はその2年に1度の行事だ。それもあって、間近に迫った製品発表はスマートフォン市場の向こう2年を占う、重要なイベントである。アップルはiPhoneを、そしてスマートフォン市場全体を今後も成長させていくことができるのか。今回の新モデルは、ここ数年でもっとも重要な発表となる。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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