東京地検が検事正就任会見を公開【東京地検会見】(2)

東京地検が検事正就任会見を公開【東京地検会見】(2)

6月18日。東京地方検察庁は新しい検事正の就任会見を開催した。6月10日から雑誌やフリーランスに公開を開始した定例記者会見同様に、記者クラブ以外にも公開した。定例会見では録音や撮影が認められていないが、就任会見は冒頭部分だけ録音も撮影も認められた。

以下は鈴木和宏検事正の質疑応答。

--志望動機と印象に残っている事件は。

「元々弁護士になりたかったが2年の実務修習で最終的に検事になろうと思った。裁判官の修習もやったが一番能動的に事実を調べていろんな話を聴いた上で事実を構成して罪になるかならないかを自らの判断で決定できることに魅力を感じた。捜査の範囲として携わった事件はたくさんあり、どの事件とは言い難いが、平成7年のオウム事件の主任検事として1年間捜査に携わったことが印象に残っている」

--取り調べの可視化に向けた準備、あるいは可視化を阻止する準備は進んでいるのか。

「可視化についてはすでに一部行われている。また全面可視化は法務局で勉強会が進められている。行政を見守っているところで準備する情況ではなく、公の場ではなかなか申し上げにくい」

--ご自身としては可視化についてどう考えているのか。可視化は現場の判断で出来る。弁護人から可視化の請求があったり、任意の取り調べでの自己可視化(被疑者や参考人が録音をすること)の申し出があったらどうしたらどうするのか。

「いろんな意見がある。現場の判断である程度今もやっている一方、対象者がいやだという場合は可視化をやっていない。(弁護士請求や任意の取り調べでの自己可視化は)仮定の問題で答えにくいが、一部やっている中で、大きく外れることはむつかしい。(個人的には)在宅起訴で随分前に録音したいと言われたが断ったことがある」

--身柄が取れていないヒトに対しても録音を断ったのはなぜか。

「録音は都合のいいところだけ編集できる。公開するときに1から10まで全て発表しろとも言えない。全体としてみればやむをえないやりとりも、一部をポンと出されるのはまずい。調べは一種の信頼関係がないと成り立たない。調べでは(検察官の)個人的なこととか、気持ちとか、昔の経験とかを話す。録音するのは遠慮してほしい。私自身は今でもそう思っている」

--最高検察庁刑事部長として検証を進めた足利事件や、小沢一郎民主党前幹事長の不起訴処分についてどう思うか。東京地検特捜部に期待することは。

「足利事件はわれわれにとっても菅谷さんにとっても不幸な事件。こうしたことがないようにするというのが検察庁の総意。検察の根本は変わっていない。起訴すべき者をきちっと捜査して起訴をすることは何も換わっていないが、運用に改善すべきことはあるかも知れない。基本をきちっとすれば(冤罪事件は)起きなかった。注意を喚起していきたい。小沢さんに関連する一連の事件については、個別事件を論評するのを差し控えたいが、現場は一生懸命やり、検察はぎりぎりの判断(=不起訴処分)をした」

--基本とは。

「いまさらなんで基本なんてことを言うんだといわれるが、捜査への批判がいろいろあったり、公判で遅刻する刑事が出てきたりしていることを真剣に考えないといけない。実力を養うことが大事なのに、養われないままに前例踏襲したり、慣れで行動している。緊張感がなくなるとミスをおかし、国民が自由や財産を失うことがありうる」

--被疑者の間で捜査が不十分だという声が相次いでいる。特捜部のあり方についてどう思うか。

「起訴すべき者を捜査して起訴するという基本は変わっていない。無理やり調書を取るなど客観的に見て不適切な調べは問題で改めないといけないが、ある意味では言いたくないヒトに真実の供述をしてもらうのに追求的な部分が出来ないというのでは成り立たない。特捜のあり方というのは難しい質問だが、私自身も特捜の経験がないわけではないが、特捜的なものをなくしていいのかと言えば、特捜には存在価値はあると思う。変なところに向かわないように、踏み外さないところで努力したい」

--特捜部の存在価値とは。

「われわれが扱う事件は基本的に警察の送致事件が大部分で95%かそれ以上はあるだろう。一方で財政の追求事件には専門家が必要。被害者が目に見えない汚職とか、被害として明確に届出が出てこないが罪であるものを検察がいろいろな形で捜査に関与すると言うのはありうるのではないか」

--検察審査会について。起訴の基準が検察と国民とで違うのではないか。

「起訴強制という制度ができたのだから、強制起訴の議決が検察審査会でなされるのはむしろ当然。逆に、制度を作ったのに10年も強制起訴がないという事態が起きればそのほうがおかしい。検察は法と証拠に基づいて有罪が確実と思われる事件を起訴している。嫌疑不十分は法や証拠に照らして有罪が確実ではないということだが、起訴猶予はあえて起訴するほどでもないという判断で無罪になるかどうかというのとは違う」

--今回の会見では冒頭部分のみで質疑応答の録音が認められなかった。定例会見では録音が一切認められていない。
 
 「今日は事件の会見ではない。今すぐにいいよということにはいかない。被疑者や参考人のプライバシーという問題がある」

--座右の銘は。

「座右の銘はありません。検察に必要な素養は健全な常識と素朴な正義感。備えるべき知識があるという前提で」

--趣味は。

「ほとんどないが読書くらい。乱読でどんな分野でも読むが池波正太郎の鬼平犯科帳は3回、4回読んでも新たな発見がある。SFも好き。読書以外では散歩をしている」

--出身は。

「北海道稚内。高校卒業まで住んでいた」

【検事正略歴】
 1951年9月4日生まれ
   74年 一橋大学法学部卒
   74年4月 司法修習生(28期)
   76年4月 東京地方検察庁検事
   77年3月以降 福島地方検察庁いわき支部、京都地方検察庁、東京地方裁判所(判事・判事補)
   95年3月 東京地検検事
   96年4月 同刑事部副部長
   98年4月 名古屋地検特捜部長
 2000年4月 東京区検察庁上席検事官
   00年9月 法務総合研究所研修第一部長
   02年10月 横浜地方検察庁次席検事
   04年6月 東京高検刑事部長
   05年8月 宇都宮地検検事正
   06年12月 最高検公判部長
   07年7月 東京高検次席検事
   09年1月 最高検刑事部長
   10年6月より現職

(山田 雄一郎=東洋経済オンライン)

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