「個人の支援」がスタートアップを元気にする 「エンジェル投資」と「クラウドファンディング」

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起業家が直面する大きな課題の一つが事業資金をいかに調達するかということです。自己資金に加え、銀行の融資、ベンチャーキャピタルの投資などの方法がありますが、実績のない起業家にはハードルが高いのが現状です。この資金調達の課題を解決する方策として、エンジェル投資とクラウドファンディングがあります。本稿ではエンジェル投資とその促進策のエンジェル税制、クラウドファンディングとその規制緩和について説明します。

エンジェルと起業家

7月11日、都内のホテルで開催された日本ベンチャーキャピタル協会総会の乾杯挨拶で、北城恪太郎氏(日本IBM相談役、経済同友会終身幹事)が、来場者に呼びかけました。「みなさんはエンジェル税制を御存じですか。この税制はベンチャーを応援する投資家を優遇するとても良い税制です。ぜひ多くの人に知らせてください」「私自身、6社のベンチャーに投資して、2社の社外取締役になっています。ベンチャーは信用力がないので、社長経験者が社外取締役なって信用力を補完し、経営を応援しましょう。社長経験者はそれなりの生活基盤があるので無給でいいでしょう(笑)」。

北城氏は日本のエンジェル投資家の代表的存在といえます。

トミーカイラZZ(写真は試作車)は、エンジェル投資のたまもの

京都大学の電気自動車プロジェクトを発端とし、幻のスポーツカーと呼ばれた「トミーカイラZZ」を、電気自動車で復活させた会社があります。GLM (グリーンロードモータース)は、「純粋にわくわくする車だけを造る」という目標で創業した会社ですが、その挑戦的な事業立ち上げを可能にしたのは、グリコ栄養食品元会長の江崎正道氏をはじめとするエンジェル投資家の資金です。

小間裕康社長は、「車の完成度を高めるためには多くの資金が必要でした。しかし、開発先行で収益の見込みが立たない私たちのビジネスモデルでは、ベンチャーキャピタルや銀行からはことごとく断られました。私たちの心意気に共感してくださったエンジェル投資のご縁に恵まれて救われたのです。」と語ります。GLMに投資したエンジェルからは、経営支援や人脈の紹介など資金以上の応援もあったそうです。

エンジェル投資とは?

中小企業白書2013年版では、起業時の課題として「資金調達」を課題とする企業が多いことが明らかになっています(地域密着型の企業で55%、グローバル志向の企業で59%が問題と指摘)。一般的に資金調達の手段は、3F(Founder, Family, Friend)からと言われますが、その次の手段として、銀行の融資があり、成長企業向けにはベンチャーキャピタルの投資があります。そして、それらを補完する道として、事業に共感を持つ人等からのエンジェル投資や、本稿の後半で解説するクラウドファンディングがあります。

エンジェルとは、もともとは演劇等のスポンサーとなってくれる裕福な個人を指していたのですが、転じて新しいビジネスに投資する人のことを指すようになっています。スティーブ・ジョブズの立ち上げたアップルに投資して経営支援したインテル元幹部のマイク・マークラや、創業したばかりのグーグルに投資したサン・マイクロシステムズの共同創業者アンディ・ベクトルシャイムの話は有名です。設立間もないソニーに出資した作家の野村胡堂もエンジェル投資家と言われています。

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