レオパレス創業者が設立「MDI」不正融資の手口 預金残高を水増し、金融機関から融資引き出す

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MDIの元社員によると、同社は2020年10月に約400人の希望退職を募り、多くの社員が応募したという。2018年のピーク時に約1700人いた社員は、2021年4月時点で711人に減少。豪華な商談室があることで知られた「歌舞伎座タワー」(東京・銀座)内の本社も、4フロアから1フロアへ縮小し、全国に13あった建築営業拠点も6つに縮小した。

レオパレス21の場合、赤字の原因は違法建築に伴うアパート入居率の低下だったのに対して、MDIが赤字に陥った原因を解くカギは冒頭のメールにある。

MDIは賃貸住宅を建設する投資家と金融機関の間でアパートローンの手続きを取り次いでいるが、メールの中で井村社長は「ローン取次過程でMDIが不正を働いた、と取引先の金融機関から指摘された」と打ち明けているのだ。

融資のために預金残高を操作

その不正行為とは、融資に必要な預金残高の操作である。投資家の資産背景を証明することに使われるため、「エビデンス」とも呼ばれ、金融機関が融資する際、投資家の返済余力を判断するための材料の1つになる。

オーナーの銀行通帳。7月22日にMDIから4000万円が振り込まれ、翌日にはオーナーの保有する別口座へ資金が移された(記者撮影)

融資時点で十分な預金額があれば、融資が承認されやすくなるだけでなく、金利や返済期間などの融資条件も優遇される。2018年に発覚したスルガ銀行の不正融資問題では、画像編集ソフトを使って通帳の残高を書き換えるなどの行為が横行した。

MDIから1棟アパートを購入した千葉県内のあるオーナーは、同社と契約を結ぶに際して覚書を取り交わした。ある日にオーナーの銀行口座にMDIが4000万円を振り込み、その3日後までにMDIの口座に同額を戻す、という内容である。

このオーナーによると、MDIの営業社員から賃貸住宅建設を提案されたが、MDIと銀行との事前の打ち合わせの結果、建築資金の融資には数千万単位のエビデンスが必要だと指摘された。そのため、オーナーの与信を水増ししようと、MDIから預金残高の操作を提案されたのだという。オーナーはMDI側の指示に従い、振り込まれた4000万円を別の銀行口座に移し、それぞれで残高証明書を取得し、MDIの指定する口座に返金した。

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