三井住友海上「中古車のユニコーン」に出資した訳 豊富なデータとデジタル技術を活用できるか

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そこで両社が開発中なのが、自動車に設置したスマホや専用端末から運転者の運転特性や走行距離などのデータを取得し、その結果によって保険料を算出する「テレマティクス自動車保険」だ。

テレマティクス自動車保険には、「急ブレーキや急発進が少ないなど、安全運転すれば保険料が安くなる」「車を使うときだけ保険料を支払う」「車の使用状況に応じて、分単位で保険料が算出される」などさまざまな種類があり、特に海外で普及が進んでいる。

三井住友海上は、東南アジア4カ国(シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア)で事業展開するカーロが持つ、自動車関連のビッグデータに着目している。車両価格や使用年数、運転性向、走行データ、事故データ、与信情報など同社が保有するデータの種類と量は膨大だ。

豊富なデータ活用し、新保険を開発

三井住友海上の執行役員デジタル戦略部長の本山智之氏は、「(過去の事故歴や自動車の利用期間に基づいて保険料を算出する)日本の伝統的な自動車保険の枠組みを超えた新しいテレマティクス自動車保険・サービスを開発していく。カーロにはその開発に必要な自動車関連のデータが豊富にあり、新ビジネス展開のトライ&エラーの実験場としての役割も担ってもらう」と意気込む。

中古車の査定を行う際の画面(カーロ提供)

資本提携の狙いの2つ目は、カーロの持つ、高度なデジタル技術の活用ノウハウだ。カーロは中古車売買のあらゆるプロセスにAIを活用し、迅速かつ正確な手続きを実現している。

例えば、シンガポールでは自動車ローンの与信審査などは1分以内に完了できる。官民のデジタル化が進む同国では、政府が持つ個人の信用情報に顧客の同意を得たうえでカーロがアクセスし、AIで情報を分析している。中古車の査定も画像データをもとにAIが損傷箇所を特定し、査定時間の大幅な時間短縮を可能にしている。

さらに、スマホで録音したエンジン音からAIが故障を検知するシステムを開発中で、2021年内には実用化にこぎつけたいという。将来は、売買契約書や融資契約書の締結もオンラインで完結することを目指す。

日本でも中古車のオンラインオークションを運営する事業者は存在するが、事業者同士の取り引きが中心だ。国内のある大手中古車販売事業者は「BtoCでの中古車売買をオンラインで実現しているカーロの取り組みは先進的であり、参考にしている」と話す。

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