Fマリノスから「NISSAN」ロゴが消える日 日産が英マンチェスターとスポンサー契約する意味

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日産は横浜Fマリノスへの関与を徐々に減らしている(撮影:今井康一)

日産自動車がサッカーを使ったマーケティングの見直しを加速させている。傘下のJリーグクラブ、『横浜Fマリノス』(運営会社・横浜マリノス)への関与を減らしていくと同時に、海外サッカーへのスポンサードを強化しているのだ。

日産は7月17日、イングランド・プレミアリーグ(1部に相当)のマンチェスター・シティ(MC)の持ち株会社、英シティフットボールグループ(CFG)の公式スポンサーになることを発表した。5年間の契約で、マンチェスター・シティのホーム「イテハド・スタジアム」での広告展開や移動用の公式車両の提供などのほか、CFG傘下チーム、MC女子、米ニューヨーク・シティ、豪メルボルン・シティのユニホームロゴ、サポーターとの交流イベントへの参加などを行う予定だ。

マンチェスター・シティといえば、歴史こそ長いものの、同じマンチェスターに本拠を置く世界的強豪、マンチェスター・ユナイテッドの引き立て役に甘んじるチームだった。しかし、2008年にアラブ首長国連邦(UAE)の王族の投資会社が買収したことで、状況は一変。巨額のオイルマネーで一気に戦力を高め、11-12年シーズンに44年ぶりにリーグを制覇、13-14年シーズンもプレミアを制するなど、強豪にのし上がった。コンサルティング会社のデロイトの調査によれば、12-13年シーズンのクラブ収入は3億1620万ユーロ(約442億円)で、世界第6位のビッグクラブにランクされている。

日産にとって、新興国を中心とする、世界マーケットの拡大が本業での成長の生命線だ。欧州だけでなく、新興国を含め世界的に高い人気を誇るプレミアリーグの強豪チームをスポンサードすることで、ブランドの浸透を狙えるというわけだ。

日産の持ち株比率は93%から74%へ

CFGへのスポンサードは、世界展開の加速と同時に、課題となっていたFマリノスの経営再建とも連動している。CFGへのスポンサード開始に先立ち、日産はCFGと、Fマリノスの運営に関して、資本・業務提携している。CFGはFマリノスへの第三者割当増資を引き受け、20%弱を出資する大株主となり、従来93%を出資していた日産は、持ち株比率を74%に低下させている。

日産サッカー部に源流をもつ国内名門のFマリノスだが、他のJリーグチームと同様に、設立以来、慢性的な赤字体質で、最終的に広告料を名目とした親会社による赤字補填で、帳尻を合わせてきた。だが、リーマンショックで日産本体が赤字転落したこともあり、2009年1月期から、日産はFマリノスに対する赤字補填を停止する。日本の自動車市場は構造的な縮小が避けられず、Jリーグチームの広告塔としての重要性も低下していくことも考えれば、合理的な判断だろう。

ただ、年間10億円近い損失補填を失ったFマリノスは赤字体質が顕在化し、たちまち、巨額の債務超過に陥ってしまった。片やJリーグは、クラブの財務健全化を義務づけたクラブライセンス制度を導入、2015年1月期までに債務超過の解消を迫られていた。

「Fマリノスは持続可能な状態ではなかった」、と語る日産のカルロス・ゴーンCEOが出した答えが、CFGからの出資受け入れだ。

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