どこか奇妙…心をざわつかせる絵画たち

美術史からこぼれおちた画家、ヴァロットンの魅力

スイスに生まれ、パリで活躍し、没後は忘れ去られていた画家、フェリックス・ヴァロットンの展覧会が、三菱一号館美術館で開かれている。

ヨーロッパでも回顧展は数えるほどしか開かれておらず、日本では初めて。どこか奇妙で想像力をかき立てられる作品が、20代、30代を中心に人気を集めている。学芸員の杉山菜穂子さんに、5点の作品について話をきいた。

冷たいエロス?

横たわる裸の女性が視線をこちらに投げかけている。誘惑しているのだろうか?

「それにしては、ほとばしる官能が感じられません。冷たいエロスというか、肌に触れたら冷たいのではないかと思わせます。男性の意見は違うようですが……」と杉山さんは語る。

ヴァロットンは女性が好きだった一方で、女性に対して近寄りがたいものを感じていた。そのため、裸婦の絵も真正面からではなく、横や後ろから描いたものが多いのだという。

フェリックス・ヴァロットン『赤い絨毯に横たわる裸婦』1909年、油彩/カンヴァス、73×100cm、ジュネーヴ、プティ・パレ美術館蔵 © Association des Amis du Petit Palais, Genève / photo Studio Monique Bernaz, Genève

視線の次に気になるのが、このポーズだ。「すごく不自然なんです」と言われて試してみると、確かに背中がねじれ、首が悲鳴を上げる。

「お尻を描きたかったのだと思います」と杉山さん。彼は女性の内面ではなく、「形」を描きたかったのではないかと見る。

視線とポーズの不自然さ以外にも、ミステリアスに感じる理由がある。ひとつは背景がシンプルすぎること、そして影の描き方だ。

「普通は影を見れば光源がどこにあるかわかりますが、彼の絵ではわからない。不自然な影が謎めいた印象を与えています」

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