恐るべき浸透度「キャッシュレス決済」の落とし穴 「QRコード決済」を好む人は狙われがち?

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先のインフキュリオンの調査で、キャッシュレス利用者の興味深い一面が報告されていた。特にQRコード決済アプリの利用者は、非利用者に比べ、生活全般でアプリを利用する率が顕著に高いというのだ。お店のアプリを入れてクーポンを提示する、アプリでネットショッピングをする、銀行のアプリで残高チェックをする、音楽や動画の視聴をするなど、生活サービス全般を積極的に使っている。

ということは、それだけ「オトクキャンペーン情報」を受け取る機会も多くなるわけだ。50円引きのクーポンが使えます、初めてサービスを利用する人に限り200ポイントをプレゼント、この期間だけ10%還元に――と、続々知らせがやってくる。

もちろん無視もできるが、“ポイ活”好きの人だと浮き足立つ。よく行く店のクーポンがやってきたりすれば、使わずにはいられない。これを「“もったいない”消費」と呼んでいるが、手元にあるものを使わないのはもったいないという行動で、ムダにしたくないと思ってしまう人の心理だ。

わざわざそれを使うために出かけ、ついでに他の余計なものまで買ってしまう。せっかく忘れていても「もうすぐクーポンの期限切れですよ」というお知らせまでやってくる。おまけに、そのクーポンを使おうとして、支払いのためにスマホ決済の残高をまたチャージしてしまうと、さらなる「シロアリ支出」の穴に落ちてしまうのだ。

いつまでたっても使い切れない小銭残高

割引クーポンを使うために、足りない残高をチャージしたとする。スマホ決済で支払うと、その額に応じてポイントが還元されるのはご存じの通りだ。特に、スマホ決済サービスはたびたび大盤振る舞いをする。PayPayが高還元率キャンペーンを武器にグングン利用者を増やしたというのは、先に書いた通りだ。

しかし、この還元された端数がくせ者。チャージは現金や銀行口座、一部のクレジットカードでできるが、細かい金額ではなく1000円以上の単位が多い。使う金額ぴったりチャージできることはまずないため、どうしても端数が残る。さらに、数%のポイントが還元されると、もっと細かい端数が加わる。小銭のような、なんとも半端なお金がアプリ内に残ることになるわけだ。

スマホ決済だけでなく、nanacoやWAONなどの電子マネーもしかり。細々した小銭がちょっとずつ残ってしまい、それを使うためにまたチャージをし、そこに新しくポイントが還元され、それを使うためにチャージをし――以下繰り返し。トクしたつもりが、なぜかお金を使わされ続けるわけだ。実にうまくできた仕組みではないか。ポイント還元は消費者のためならず、がしみじみ身に染みる。

キャッシュレス決済では「払った意識が薄いのでムダ遣いにつながる」と言われるが、コロナ下ではそれがますます加速した。まず、動画サイトやマンガアプリなどの月額課金の契約をした人は多いだろう。たいていの場合、「契約した月は無料」というケースが多い。「入り口無料方式」と筆者は呼んでいるが、おためし気分で気軽にエントリーさせるための手法だ。

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