普通の子も「パリピ遊び」するZ世代若者の心理 酒はもはや「非日常」を演出するグッズに

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以上、「パリピごっこ」の事例を紹介した。

「若者のお酒離れ」と言われる昨今だが、実際はお酒を知る、楽しむきっかけがないという若者も多い。そうした若者にとって、今の「パリピごっこ」は格好の素材だ。

それほど、若者にとっては「酒」自体が縁遠いもので、非日常を楽しめるアイテムになっているともいえる。コロナ禍の中、非常識な形での飲酒はもちろん禁物だが、こうして酒というレジャーが若者の間で多少なりとも見直されていくのではないだろうか。

原田の総評:酒が「非日常」のアイテムに

パリピでない現役大学生の「パリピワナビー」レポートはいかがでしたでしょうか。

彼らのレポートから見えてきたのは、恐らく「パリピ」という浸透した概念が、パリピでない若者たちの間でいくつかの「口実」になっている姿です。

口実の1つ目は、お酒離れした今の一般の若者たちは、男同士カフェでお酒なしで過ごすのも当たり前になっており、友達同士の交流に必ずしも「お酒」が必要でなくなってきています。しかし、お酒を飲んで酔っ払い、互いに腹を割って仲良くなる、というお酒の価値は若者たちも十分に理解しており、仮にわざわざお酒を飲まなくてもよい関係性でも、「パリピごっこ」という口実があるとお酒を飲み、互いの関係性を縮めることができる、ということなのだと思います。

口実の2つ目は、オンライン授業やテレワークが増え、リアルな友達と実際に会って関係性を深めることがしにくくなっていることがあります。今がコロナ禍であるが故に上の世代からの批判は多くなると思いますが、「パリピごっこ」という口実で公園や宅飲みで集まれ(もちろん常識の範囲内で)、絆を深めることができる、ということだと思います。

いずれにせよ、「若者のお酒離れ」と言われ始めてから10年以上経ち、Z世代の若者たちにとってお酒がマストアイテムではなくなり、「日常のアイテム」から「非日常のアイテム」となり、その「非日常のアイテム」を使う口実や名目に「パリピ」という存在がなっていることが分かりました。

アフターコロナの時代に、お酒メーカーにとっては、お酒をどう若者の間で「日常のアイテム」に戻すことができるが課題になってくるでしょうし、その他企業にとっては「パリピ」以外の飲酒動機を創出することがビジネスチャンスになってくるかもしれません。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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