(第2回)「こんなに苦労している採用担当者」~採用担当者の本音をアンケートで聞く~(その1)

●採用担当者自身のスキルアップ

採用担当者は、人事の中でこれまで専門性がそれほど重視されてこなかった傾向がある。労務管理、制度設計、教育に対して一ランク簡単な仕事と思われてきたのではないか。高度成長期の新卒一括採用では「採ってから育てよ」という姿勢で、とりあえず入れてしまえばよいという考えで、学生相手の採用は誰がやっても同じ結果の仕事のように上からは映っていたからかもしれない。しかし、前述のように、採用は大変困難な状況に置かれており、優秀な人材を確保するためには様々なスキル、専門性が必要となっているのである。
そこで、採用担当者自身に「採用担当者のスキルとして重要なこと」を聞いたところ、表2のような結果になった。

【表2】採用担当者のスキルとして重要なことは?(複数回答可)
採用全体の戦略策定 49
応募者とのコミュニケーション力 46
他社と差別化するアイデアを出す能力 37
的確な情報収集・分析力 30
求める人材要件の設定 29
応募者を見極める面接手法 26
応募者母集団形成ノウハウ 22
社内の人脈作り 18
雇用関連法規の知識 9
専門業者、外部スタッフの人脈作り 9
採用プロ.com 2007年11月 N=73

1位は「採用全体の戦略策定」(67%)。採用ブランド構築は、一朝一夕にできるものではない。新卒・中途に関わらず求職者を継続的にひきつけることができるかが問われてくる。また、新卒採用は1年間を通した業務となっており、毎年変わる採用動向をにらみながら的確な採用戦略・戦術を実行していかなければならない。そのための(4位)「的確な情報収集・分析力」(41%)がスキルとして重要となる。
「最新の情報収集を怠らないこと」(その他サービス)
「学校のキャリアセンターとの情報交換において、収集した情報を採用活動へ活かす」(情報処理・ソフトウェア)
「他企業採用担当者との情報交換、勉強会の実施」(フードサービス)
「採用関連セミナーへの積極的参加」(IT)
などのコメントが集まった。

次に、1位とほぼ同数の2位に「応募者とのコミュニケーション力」が入った。最近の採用担当者は実に多くの学生と接触する。
おそらく5~6年前と比べて、学内セミナー、合同企業セミナー、自社セミナーで実際に会う学生数は5倍はくだらないだろう。大手の金融機関であれば、200~300校の学内セミナーに参加することなどは普通である。某総合商社などは、少人数制の就職ガイダンスを数名の採用担当者だけで年内70回近く行うという。インターネットが普及した反動もあり、実際に会ってPRやコミュニケーションをとらなければ学生に理解してもらえないと言う気持ちを採用担当者は強く持っている。そんな中で、「応募者とのコミュニケーション力」をスキルとして重視する採用担当者は多いのである。
ただ、
「とにかく学生さんの前で語り続けること。その備えとして、よく働き・学び・遊ぶことを心がけています。今春から改めて大学にも通いはじめました」(IT)
「キャリアカウンセリングの勉強」(その他金融)
といったコメントはあるものの、コミュニケーション力のスキルアップで具体的なものはあまり出てこない。それこそOJTでやりながら慣れるということだろう。一方で5位「応募者を見極める面接手法」については36%と低くは無いものの「応募者とのコミュニケーション力」とは大きな差がある。売り手市場のために、見極める力よりも引き付けるコミュニケーション力のほうが今は重要と言うことだろうか。

3位は「 他社と差別化するアイデアを出す能力」(51%)。同時期に1万社を超える企業がほぼ数ヶ月間のあいだに採用活動を繰り広げる中で、「差別化」こそが採用の成否を分ける。採用戦略の中でどう差別化する企画、アイデア、採用手法を組み入れられるかが採用担当者に問われるのである。5位は「求める人材要件の設定」(40%)。かつて日本ではどの企業も総合職、ゼネラリスト志向が中心で、人材要件などはそれほど問題にならなかったが、現在ではミスマッチを引き起こさないためにも人材要件の設定を行うことが多くなってきている。だた現状ではこのやり方は企業によって相当大きな差があり、レベルもまちまちだ。採用担当者には外部セミナー、研修などで方法論を学んでいる人もいるが、全く関係ないと思っている人も実は多い。しかし、人材要件を明確に決めずに採用活動を行っている企業は、ターゲットを定めずに商品を製造販売しようとしているようなもの。マーケティング的観点からは実は無謀なことだと言える。

●今後、採用業務の専門性、高度化が益々求められる

ここまでアンケートで採用担当者が学生(マーケット)に対してどのような印象を持っているか、自社の課題は何だと考えているか、またその課題解決のために必要だと感じているスキルアップは何かを見てきた。
国内では経済全体の右肩上がりの成長が困難な中、他社との競争に打ち勝つために人材力の重要性は言うまでも無い。また、海外市場に活路を見出す企業なら、なおのことタフな突破力のある希少な人材が必要となる。今後も少子化は続き、慢性的な人材不足は続くだろう。しかしその困難さは量的なものだけではなく、質的なものの方がより重要となる。企業の採用力が人材のレベルを決め、それが企業力そのものになっていく。採用は経営戦略の最重要事項である。
このような状況で、採用力を継続的に高めるブランド戦略、状況に応じた採用戦術などは極めて専門性の高い高度な業務になっていく。まさにプロ化が求められるのである。今回のアンケートはその問題を考えるほんの第一歩にすぎない。

採用プロドットコム株式会社
(本社:東京千代田区、代表取締役:寺澤康介)
採用担当者のための専門サイト「採用プロ.com」を運営。新卒、中途、派遣、アルバイトなどの採用活動に役立つニュース、情報、ノウハウを提供している。
http://saiyopro.com/
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