ソフトクリーム首相の命知らずの漫言

ソフトクリーム首相の命知らずの漫言

塩田潮

 5月4日、沖縄訪問中の鳩山首相は「学べば学ぶにつけて、沖縄の米軍全体と海兵隊が連携している中で抑止力が維持できるという思いに至った」と語った。そんなこととは知らなかった、ごめんなさいと素直に認めたのだ。
 正直で温順、政治家臭さがなく、親しみやすいという評もないわけではないが、甘い、軽い、安直、無責任、恥知らずといった批判が噴き出した。首相の姿勢と覚悟も問題だが、それ以上に「言葉」が問われている。

 「思い」「心」「友愛」などを多用する「鳩山語」の是非ではない。
 普天間問題で「県外」(昨年7月)、「5月までに」(12月)、「腹案あり」(今年3月)と明言してきて、「沖縄県民にお詫びを」「公約は党の公約。発言は私の発言」(5月4日)と言い出した。
 だが、「軽い言葉」はいまに始まったことではない。結党以来のメンバーの民主党議員が「失敗に終わった1999~2002年の代表時代と同じ」と振り返る。このときは「曖昧」「意味不明」「ぶれる」がたびたび問題になり、代表失格と判定された。この点を反省したのか、以後は「言い切る」を心がけるようになる。
 ところが、持ち前の率直さと旺盛なサービス精神が裏目に出たのか、言い切るために、今度は、不確かな話をつい口走る、言ってはならない本音を口にするといった場面が多くなった。

 96年夏、結党した民主党を、中曽根元首相は「ソフトクリームみたいなもの。甘くておいしいが、夏が終われば溶けてなくなる」とからかった。予想は外れ、13年後に政権に到達したが、初代首相の鳩山氏は、甘くておいしい言葉を連発し、いま夏がくる前に溶けてなくなりそうな「ソフトクリーム首相」の苦境だ。
 言葉は政治家の命だが、ソフトクリーム首相の命知らずの漫言は、命取りとなるのか、それとも運よく命拾いして溶けずに生き延びることができるか。政権存亡の危機はソフトクリームの季節のこれからが本番である。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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