列車とホームの隙間埋める「秘密兵器」の開発者 JRや大手私鉄が続々と採用、足元の安全支える

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一方、1990年3月開業の長堀鶴見緑地線は、日本初のリニア方式を採用した地下鉄だったが、開業時点ではホームドアなし、段差と隙間も5㎝ずつあった。

このため、ホームドアを新設するにあたって、既設駅の段差と隙間をいかにして解消するかの検討を開始した。ホームドアを設置すれば、段差・隙間を解消する箇所は、乗降口の部分だけで済み、それ以外の箇所には設置する必要がなくなり、設置費用を圧縮できる。

この段階で世の中に存在した先行製品は、沖縄都市モノレールで採用された韓国製のゴム製品のみ。平らな天板を付けるなど韓国製の欠点を補うなどして独自開発した。

平らな天板を付けるなど独自開発した(写真:大阪メトロ)
長堀鶴見緑地線全駅の全乗降口にくし状ゴムを設置。段差1.5㎝、隙間2㎝を実現(筆者撮影)

ホームドアともに、長堀鶴見緑地線全駅の全乗降口にくし状ゴムを設置したのは2010年7月。2㎝〜5㎝どころか段差1.5㎝、隙間2㎝を実現した。

「足元を見ることなく乗り降りするエレベーターなみが目指すところ」(大阪メトロ広報)だという。

大阪メトロは全路線合計133駅のうち、設置の必要がないニュートラム10駅、今里線11駅を除く112駅すべての全乗降口に、ホームドアとくし状ゴムの設置を目指す。完了目標時期は2026年3月である。

ちなみに、大阪メトロ独自開発のくし状ゴムを共同開発した素材メーカー名は非公表。大阪メトロは株式会社ではあるものの、100%自治体出資なので、「これで利益を上げるつもりはなく、問い合わせを受ければ対応するが、積極的に外売りする予定はない」(大阪メトロ広報)という。

東京メトロの取り組みは?

東京メトロも段差・隙間の解消研究には早くから取り組んできた。国交省が「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づいて、「鉄道駅におけるプラットホームと車両乗降口の段差・隙間に関する検討会」を立ち上げ、2019年8月に『とりまとめ』を公表するために実施した実証実験では、新木場の総合研修訓練センターを提供している。

東京メトロが採用したくし状ゴム(写真:東京メトロ)

落下防止目的にくし状ゴムの運用を正式に開始したのは、大阪メトロに遅れること11カ月、2011年6月からである。

形状は段差を解消するための先端タイルとの一体型だが、くし状ゴム部分は天板が平らで大阪メトロのものとよく似ている。

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