「音がうるさい」クレーム寄せる隣人への対処術 まずは誠意を持って受け止めて音源を特定

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「床衝撃音」を防ぐ方法のひとつとして、上下階を仕切るコンクリートにもうひとつ床をつくる二重床をすすめられることがあります。もともとあるコンクリート(スラブといいます)から脚を立ち上げ、その上に合板などを敷いて床材を貼り、床を二重にするやり方です。

「二重床」にすれば、躯体であるコンクリート=下の階の天井に、直接衝撃を伝えないので、「軽量床衝撃音」には効果があります。

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同じ理屈で「重量床衝撃音」にも一定程度の効果はあるのですが、必ずしも救世主になるわけではありません。というのも、床材とコンクリートの間の脚部や空間で音が共振し、太鼓のように響いてしまうことがあるからです。

この場合は、わりと低音(周波数が低い)で発生することが多いのですが、そうすると、もともと低音が問題となっている「重量床衝撃音」に、さらに低音が加わって、逆に、大きくなってしまうことが多いのです。

床材の構造や材料によって性能が異なりますので、一概にはいえませんが、二重床は多くの製品でこの傾向がみられます。

もし二重床にするなら

この問題はかなり専門的になりますので、ここでは省きますが、もし二重床にするのなら、JIS規格で表示された製品を選ぶことをおすすめします。

JISは日本産業規格といい、床材に対しては「JIS A 1440-1,-2」があります。少なくともこれらの規格による測定結果が書かれたカタログを見て、製品を選ぶようにしてください。

いずれにせよ、二重床は床や脚部などが共振する影響が出るので、お金をかけて二重床にしてみたところで、「重量床衝撃音」に関しては、思ったほど効果は期待できないことが多いと認識しておいてほしいと思います。

井上 勝夫 日本大学名誉教授

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いのうえ かつお / Katsuo inoue

日本大学名誉教授。工学博士。一級建築士。 日本建築学会理事、同関東支部長、同環境工学委員会委員長、環境振動運営委員会委員長、日本音響学会評議員、日本騒音制御工学会理事などを歴任。現在、日本音響材料協会理事。

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