なぜ"水戸岡列車"が全国各地で増殖中なのか しなの鉄道「ろくもん」も「ななつ星」のデザイナー

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観光で集客増を狙う地方の鉄道会社の間でも、水戸岡デザインによる観光列車の導入が相次いでいる。くま川鉄道(熊本県)の「KUMA」、肥薩おれんじ鉄道(熊本県)の「おれんじ食堂」、井原鉄道(岡山県)の「夢やすらぎ号」、富士急行(山梨県)の「富士登山電車」、北近畿タンゴ鉄道(京都府)の「あかまつ」「あおまつ」「くろまつ」、富山地方鉄道(富山県)の「アルプスエキスプレス」などである。

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長野の木材を使った「ろくもん」の車内

なぜ、これほどまでに地方の鉄道会社の間で水戸岡デザインが人気なのか。丁寧に作り込まれた車両が乗客に好評だから、ということは言うまでもない。ほかにも理由はあるはずだ。

そう思っていた矢先、ある在阪の鉄道会社幹部がこんなヒントをくれた。「経営の厳しい地方の鉄道会社は、観光列車導入に多額のコストをかけられない。それも水戸岡氏を起用する理由の一つではないか」。

低コストが人気の理由?

水戸岡デザインの観光列車は、大量輸送を目的とした通勤車両とは異なり、制作費は高いように見える。だが、各社の車両を比較すると、車内レイアウトや座席の形状など、JR九州の観光列車と似ている部分が多い。完全オーダーメードでなく、ある程度共通化することでコストを削減しているのかもしれない。

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JR九州の「指宿のたまて箱」の車内

たとえば、2011年にデビューしたJR九州の人気観光列車「指宿のたまて箱」は2両編成の既存車両の改造であるが、制作費は2億円弱かかっている。

一方で「ろくもん」は3両編成の既存車両の改造で制作費は1億円強。ベースとなる車両が違うので単純に比較はできないが、JR九州よりも少ない予算で同レベルの車両が作られている。

水戸岡氏は11日の出発式で「しなの鉄道はギリギリの予算にもかかわらず、ずうずうしいほど夢とロマンあふれる要望でいっぱいだった」と語った。「ろくもんはななつ星の30分の1の予算しかなかったが、それに負けない列車ができた。名前も『ろくもん』で『ななつ星』に負けていない」。

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