au「povoは集客装置」、店に不適切販売指示の罪 景表法、独禁法、電気通信法に違反のおそれも

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東洋経済はKDDIに「povoで勧誘した客をauのプランに加入させるように指示するのは不適切では」と質問した。

するとKDDIからは、「新ブランドであるpovoを告知する目的で行っている。集客装置やフックという言葉は、お客様の関心が高いpovoについてメリットとデメリットを店頭で案内することを意味している」「お客様のニーズに合わせ、安心で大容量プランのau、データも繰り越せるUQモバイルを含めて案内し、適切に提案するよう推奨している」(広報)との回答があった。

だが、KDDIは上述のマニュアルで「auの即日成約につなげる」ように指示している。加えてマニュアルでは、ソフトバンクのオンライン専用格安プラン「LINEMO」を引き合いに設定・問い合わせ方法などオンライン専用プランならではのデメリットを指摘する説明例も掲載。他方で、povoの具体的メリット(月額に1回当たり200円を追加で支払えば24時間データ使い放題になるなど)の説明を促す記述はない。

povoの巨大看板で集客

KDDIの代理店向け販促マニュアルではpovoを「集客装置」と位置づけ、おとりにしてauのプランに誘導することを推奨している(記者撮影)

記者も実際に「povoフック」の営業現場を訪れた。3月28日の日曜日、多くの買い物客で賑わう東京都内のあるショッピングモールの1階に、auショップの出張販売ブースがあった。

そこには、約2メートル四方のpovoの巨大看板が掲げられていた。「新料金プラン povo誕生」の大きな文字が並ぶものの、「オンライン専用」等の文字はない。その近くに張り出されたポスターでは「20GB 2480円」の文字が強調されていたのに対し、「受付やサポートはオンライン専用」という説明はごく小さな注意書きにとどまる。

スタッフが「povoに興味ありますか」と話しかけてきたので「あります」と応じると、「(モール内の)上の階に店舗があるので、そちらで話を聞いていきませんか」と言われ、記者はauショップへと案内された。

イベントブースで伝えた通り「povoに入りたい」と話すと、ここで思わぬ説得を受ける。「少しの間でいいので、いったんauのプランに入りませんか。そうしていただければ1万円キャッシュバックするので直接povoに入るよりお得です。数日後にpovoに変えてよいので」というものだ。

代理店がそこまでしてauのプランを推すのには理由がある。前出のauショップ代理店の幹部は「数日でもauのプランに入ってもらえば他社からの乗り換え獲得件数にカウントされ、店の成績アップになる。すべてはKDDIの成績指標を追うためだ」と話す。キャシュバックの原資については、「KDDIではauへの乗り換え獲得1件ごとに代理店にインセンティブを出しており、1万円くらいならほぼ賄える」(同幹部)という。

KDDIとしては、auショップが「後でpovoに変えればいい」と案内した客のうち、後々povoへの移行を忘れてしまう、あるいはオンライン手続きがわからずauのプランを契約し続ける客がある程度残れば、十分に「お釣り」がくる計算とみられる。

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