日本に住む黒人作家「アジア系差別」に思うこと 差別が別の差別を呼ぶ悪循環をどう考えるか

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アメリカ人である私は、特に白人のアメリカ人がヘイトクライムの加害者になるのを見慣れている。被害者はたいていマイノリティやLBGTQIA、そして女性であり、加害者は通常、白人男性だ。だがブランドン・エリオットは断じて白人ではない。彼は黒人であり、そのことに私はとてつもなく驚かされた。

それでも、私はここアジアにおける「Blackness」すなわち、「黒人という存在」の非公式な代弁者と見なされることが多いため、アメリカで起きたこととはいえ、「黒人」男性によるアジア系に対するこの暴行について発言する義務があると感じる。いまやメディアはグローバルであり、アメリカで起きることはこちらにもたやすく影響が及ぶことがあるし、その逆もまたしかりだからだ。

日本人が犯罪の対象になることもありうる

いまのところ、アジア系アメリカ人に対する人種差別的暴力の犠牲になってきたのは、ほとんど韓国系と中国系だ。だが、残念ながら、それはいずれ変わるかもしれない。

いつの日か、日本人観光客か、アメリカにいる家族を訪問した日本人女性か、あるいは日本人サラリーマンが、アジア人である(アメリカ人の病んだ人種差別的ロジックによれば、アジア人であるがために新型コロナの責任を負っている)という理由で暴行を受けたり、殺されたりするかもしれない。

そうなれば、日本にいる日本人は、こうした事件により注目するようになるだろう。そして、無力なアジア系女性に憎しみをぶつける黒人男性の姿が録画されたことは、日本で暮らす黒人に向けられる視線に悪影響を及ぼすかもしれないのだ。

もちろんこれは非常に不公平なことだが、世界中のマイノリティが始終このようなことを経験している。あなたのような外見の人々に関するステレオタイプが、自分自身の声よりもはっきりと聞こえてくる――これが、あなたがマイノリティであると確信する瞬間だ。

あなたの行い、特に悪い行いが、あなたと肌の色や出自を一にする人々を代表するものとして受け止められてしまうと、早かれ遅かれマジョリティの言動(悪いものも含め)を学ぶ必要性に気づく。大げさを言っているのではない。マジョリティの雰囲気や傾向を認識することが生死を分けることさえあるのだ。多くのアジア系アメリカ人がいま、このことを学んでいる。

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