AIが示す「コロナ後日本」の未来は「分散型」社会 「昭和的価値観」や行動様式の終焉と「世代交代」

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もともと私たちの研究グループは、私を代表とする京都大学の4人の研究者および京都大学に2016年に創設された日立京大ラボとの共同研究として、2017年9月に、日本社会の未来に関するAIを活用したシミュレーションを公表していた(これについては拙著『人口減少社会のデザイン』を参照いただきたい)。

その概要は、この東洋経済オンラインにおいても何度かにわたり紹介してきているが(『「2050年日本の破局」を防ぐ持続可能シナリオ――AIが示す人口減少時代の「地域分散型」の未来』)、そこでのポイントは「都市集中型」か「地方分散型」かという点に関わっている。

すなわちこの研究では、日本社会の現在そして未来にとって重要と思われる約150の社会的要因からなる因果連関モデルを作成し、AIを使って2050年に向けての2万通りの未来シミュレーションを行った。

すると、日本社会の未来の持続可能性にとって、東京一極集中に示されるような「都市集中型」か「地方分散型」かという分岐が最も本質的であり、しかも人口、地域の持続可能性や格差、健康、幸福といった観点からは、「地方分散型」のほうが望ましいというシミュレーション結果が出たのである。

加えて、そうした後戻りできない分岐が2025年から2027年頃に生じる可能性が高いという内容だった(上記東洋経済オンライン記事および広井前掲書参照)。

読者の方はお気づきのとおり、これはまさに、新型コロナ・パンデミックの勃発で明らかになった問題――「集中型」社会の脆弱性や、過度な“密”がもたらす感染症拡大のリスクなど――を先取りしていたような内容であり、まるでAIが未来を“予言”していたかのような面もあったので、昨年にコロナが発生した際、私はとても驚いたのだった。

そして、今度は新型コロナのパンデミックが生じた状況を受けて、新たに「ポストコロナの日本社会の未来」に関する調査研究が必要と考え、AIを活用したシミュレーションと政策分析を新規に行うことにしたのである。

ポストコロナ社会のAIシミュレーション

具体的には、日立コンサルティングのメンバーおよび上記2017年のAI分析を一緒に行った日立製作所の福田幸二氏(日立製作所研究開発本部東京社会イノベーション協創センタ主任研究員)と昨年5月頃から検討を始め、今回その分析結果をまとめた。

シミュレーション手法の概略は以下のようなものである。

まず、2050年に向けたポストコロナの日本社会において重要になると考えられる347個の社会指標――これには大きく、①「高齢人口」や「有効求人倍率」といった社会を構成する一般的な社会指標と、②「サテライトオフィス導入企業数」のようなコロナ禍によって新たに社会に影響を与えると想定される指標の両者が含まれる――を抽出し、それらから構成される「ポストコロナ社会の因果連関モデル」を作成した。

(出所:筆者及び日立コンサルティングの共同研究より)

その後、2020年から2050年までの30年間を対象とするポストコロナ社会の未来について、AIを用いてシミュレーションを行い、約2万通りの未来シナリオを導出した(最終的に、それらは大きく6つのシナリオグループに分類できることが示された)。

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