AIが示す「コロナ後日本」の未来は「分散型」社会 「昭和的価値観」や行動様式の終焉と「世代交代」

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しかし日本の場合、あまりにも「“昭和”の成功体験」――「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまで称された――が鮮烈であったため、とくに団塊世代前後を中心とする世代にはそれが染み付き、従来型のモデルを維持ないしそれに固執し惰性を続けたのが“平成”であり、それが結果として「失われた〇〇年」を帰結させたのだった。

したがって、ポストコロナの日本についてAIシミュレーションが示した“働き方・生き方を含む包括的な「分散型」社会”とは、ポストコロナという局面のみにとどまらない、人口減少社会あるいは成熟社会への移行という、日本社会のより中長期的な構造変化に関わる内容でもあるだろう。

この場合重要なことは、そうした変化は、次のようなポジティブな意味を持つものとして理解できるという点である。

すなわち山登りに例えるならば、“昭和”に代表される高度成長と人口増加の時代とは、先ほども触れたように“集団で1本の道を登る”時代であり、ゴールは1つだった。

しかし山頂に立ってみれば、視界は360度開け、したがって各人はそれぞれの道を選びつつ、従来よりも自由度の高いかたちで自らの人生をデザインし、創造性を発揮し、自分のやりたいことを行っていけばよいのである。

それがここで述べている“包括的な意味の「分散型」社会”であり、同時にそうした姿こそが、昭和の“集団で1本の道を登る”モデルを引きずった「失われた〇〇年」とは対照的に、経済社会の活力や持続可能性を高めることにもつながるのだ。

都市・地方共存型シナリオに向かうためのポイント

以上がポストコロナの日本社会に関するAIシミュレーションの全体的な意味だが、併せてこのAI分析が示す、いくつかの個別の点についても若干の説明をしておこう。

①「東京への一極集中が続くと日本全体の人口減少が加速する」……「第1の分岐」に関して

シミュレーション結果の説明のところで指摘したように、ポストコロナの日本社会は、「一極集中が加速し人口減少が進むグループ(集中加速・人口減少シナリオ)」と「地方分散が進み人口減少が改善するグループ(集中緩和・人口改善シナリオ)」にまず分岐するという結果が示された。

これは、現在の日本において出生率が最も低い都道府県は東京都であり(2019年において出生率が最も高いのは沖縄県で1.82、最も低いのは東京都で1.15。なお日本全体の平均は1.36。厚生労働省・人口動態統計)、この傾向は多少の改善があったとしても当面大きくは変わらないので、東京への一極集中が進むことは、日本全体の平均出生率を下げる方向に働き、結果として人口減少をさらに促進させることを意味している。

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