スタンフォードという職場…からの転職活動 連載打ち切りの危機!? 学者の就職活動の話

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転職活動を隠さず現在の職場とも交渉、その懐の深さ

さて、そういうわけで、僕はいろんな大学との交渉を進めながら、スタンフォードとも交渉をしていた。この過程では、もちろんストレスがたまるのだが、それでも、よかったこともある。それは、大学側が、教員が就職活動していることに対してオープンで、それでいてスタンフォードに残留したくなるように、いろいろと融通を効かせてくれようとしたことだ。

僕はいまだに日本の伝統的価値観(?)で生きているせいか、ほかの大学と交渉していることをおおっぴらに言うのが、最初は居心地よくなかった。けれども、同僚に嫌味を言われるようなことは一度もなかったし、それどころか、移籍するべきかどうかについて、どういう点を考慮したらよいかだとか、どういう点を交渉したらよいかだとか、いろいろ相談に乗ってくれたりもした。

これもよく考えてみるとあまり不思議なことではないのかもしれない。同僚たちもほとんどがどこかのタイミングでよそから移籍してきた人たちだし、またどこかに移籍する可能性も高い。試しにざっと数えてみたら、現在の教官のうちで、僕が就職した2009年より後から来た教官は大体4分の1くらいを占めていた。実際、今年も多くの同僚がほかからオファーをもらっていて、そのうち2人は実際に移籍することになった(仲良しだったのでとても残念だが、それはまた別の話)。

誤解のないように書いておくと、「それに比べて日本は……」というようなことを言いたいわけではない。そもそも僕は日本での転職活動のことはよく知らないし、日本でも企業や組織の文化は千差万別だろう。

ただ、個人的な体験からすると、この「転職者にフレンドリーな文化」に、精神的にずいぶん助けられたことは間違いない。従業員の事情や都合に十分配慮したうえで、彼らが残留できるよう、雇う側もできる部分では譲歩する、という仕組みがうまく回れば、とても幸せなことだと思う。これも「言うは易し、行うは難し」だとは思うけれど。

転職活動終了! その結末とは……

そうそう、僕の場合の結末。最終的には、スタンフォードがいろいろな考慮のうえで、好条件を提示してくれたので、とりあえずはここに残ることになった。というわけで『スタンフォードの研究室から』打ち切りは回避されました。よかったよかった。

残留のためにいろいろしてくれた皆様、オファーをくださった他大学の皆様、本当にありがとうございました。あ、もちろんオファーに至らずとも検討してくださった皆様も、ありがとうございました。時間や労力を割いてくださった皆様に、本当に感謝しています。今後とも、移籍のお声をかけてもらえるよう、日々の仕事を頑張ります。

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